食品衛生法|法改正による主な変更点

食品衛生法とは、食品の安全性を確保するために必要な規制をかけ、食中毒等の飲食に起因する衛生上の危害が発生することを防止し、私たち国民の健康を保護することを目的とする法律です。

この食品衛生法の一部が平成30年に改正され、令和3年から施行されています。本ページでは、これから飲食店等の開業を考えている方に向けて、食品衛生法のどのような点が改正されたのかについてお伝えしていきます。

食品衛生法の主な改正点

平成30年6月13日に食品衛生法が改正され、令和3年6月1日から施行されています。この法改正により、主に以下の点が大きく変りました。

  • 営業許可業種の全面的な見直しが行われ、32業種が許可業種の対象となった
  • 営業届出制度が創設され、許可業種及び届出不要業種以外の営業者は保健所への届出が必要となった
  • HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理への取り組みが義務化された
  • 食品衛生責任者の設置対象施設が拡大された

営業許可業種の全面的な見直し

食中毒等のリスクや過去の食中毒の発生状況等を踏まえ、食品衛生法上の許可業種の全面的な見直しが行われ、旧法では34業種あった営業許可業種は、新設、再編、統合等され、32業種が許可業種となりました。

営業許可が必要な業種

食品衛生法上の営業許可が必要となるのは、以下の32種類の業種です。

No.業種概要
1飲食店営業食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業 
2調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業対象となる自動販売機による営業は以下の2種類 
①部品等が直接食品に接触する機種であって、自動洗浄装置等の危害発生防止のための高度な機能を有してない機種による営業 
②部品等が直接食品に接触する機種であって、自動洗浄装置等の危害発生防止のため
の高度な機能を有しているが、屋外に設置されている機種による営業 

※屋内に設置され、自動洗浄機能等一定の要件を満たす場合は届出の対象となる。
3食肉販売業(未包装品の取り扱い)鳥獣の生肉(骨及び臓器を含む)を販売する営業。食肉を専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのままの状態で販売するものを除く。
4魚介類販売業(未包装品の取り扱い)店舗を設け、鮮魚介類(冷凍したものを含む)を販売する営業。魚介類を生きているまま販売する営業、鮮魚介類を専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのままの状態で販売する営業及び魚介類競り売り業に該当するものを除く。
5魚介類競り売り営業鮮魚介類を魚介類市場において競り売りその他の厚生労働省令で定める取引の方法で販売する営業
6集乳業生乳を集荷し、これを保存する営業
7乳処理業生乳を処理し、若しくは飲用に供される乳の製造(小分けを含む)をする営業又は生乳を処理し、併せて乳製品(飲料に限る)若しくは清涼飲料水の製造をする営業
8特別牛乳搾取処理業牛乳を搾取し、殺菌しないか、又は低温殺菌の方法によって、これを厚生労働省令で定める成分規格を有する牛乳に処理する営業
9食肉処理業食用に供する目的で食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(平成二年法律第七十号)第二号第一条に規定する食鳥以外の鳥若しくはと畜場法(昭和二十八年法律第百十四号)第三条第一項に規定する獣畜以外の獣畜をとさつし、若しくは解体し、又は解体された鳥獣の肉、内臓等を分割し、若しくは細切れする営業(複合型そうざい製造業又は複合型冷凍食品製造業に該当するものを除く)
10食品の放射線照射業食品に放射線を照射する営業
11菓子製造業菓子(パン及びあん類を含む)を製造する営業。社会通念上菓子の完成品とされる食品を製造する営業をいい、いわゆる菓子種の製造業は含まれない。

※菓子製造業を取得している施設が調理パンを製造する場合、そうざい製造業や飲食店営業の許可は不要となる。
12アイスクリーム類製造業アイスクリーム、アイスシャーベット、アイスキャンデーその他液体食品又はこれに他の食品を混和したものを凍結させた食品を製造する営業
13乳製品製造業粉乳、練乳、発酵乳、クリーム、バター、チーズ、乳酸菌飲料その他の厚生労働省令で定める乳を主原料とする食品※を製造(小分け(固形物の小分けを除く)を含む)する営業

※乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26 年厚生省令第52 号)第2条第13 号に規定する乳製品(同条第21 号に規定するアイスクリーム類を除く)及び同条第41 項に規定する乳酸菌飲料のうち、無脂肪固形分3.0%未満を含むもの
14清涼飲料水製造業生乳を使用しない清涼飲料水又は生乳を使用しない乳製品(飲料に限る)の製造(小分けを含む)をする営業
15食肉製品製造業ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するもの(食肉製品)を製造する営業又は食肉製品と併せて食肉若しくは食肉製品を使用したそうざいを製造する営業 
16水産製品製造業魚介類その他の水産動物若しくはその卵(水産動物等)を主原料とする食品を製造する営業又は当該食品と併せて当該食品若しくは水産動物等を使用したそうざいを製造する営業。あじの開きや明太子などの他、改正前の魚肉練り製品製造業の対象であった、蒲鉾やちくわなどの食品も本営業の対象となる。また、水産製品等を用いたそうざい(魚の煮物や揚げ物等)を製造する場合には、そうざい製造業の許可は不要。
17氷雪製造業氷を製造する営業
18液卵製造業鶏卵から卵殻を取り除いたものを製造(小分けを含む)する営業。液卵とは、鶏の卵殻を割って内容物のみを集めたものであり、目的に応じて、卵白だけのもの、卵黄だけのものを製造する場合も対象となる。
19食用油脂製造業マーガリンまたはショートニング製造業を含む
20みそ又はしょうゆ製造業みそ若しくはしょうゆを製造する営業又はこれらと併せてこれらを主原料とする食品※を製造する営業

※みそ又はしょうゆを主原料とする食品の例:粉末みそ、液体みそ、調味みそなどのみそ加工品、つゆ、たれ、だし入りしょうゆ等のしょうゆ加工品(ただし、しょうゆの原料に占める重量の割合が上位3位以内であって、かつ、原料の重量に占める割合が5%以上のもの(製造時に添加した水は原料として換算しない)に限る)
21酒類製造業酒類の製造(小分けを含む)をする営業
22豆腐製造業豆腐を製造する営業又は豆腐と併せて豆腐若しくは豆腐の製造に伴う副産物を主原料とする食品※を製造する営業

※豆腐若しくは豆腐の製造に伴う副産物を主原料とする食品の例:焼豆腐、油揚げ、生揚げ、がんもどき、ゆば、凍り豆腐、豆乳(密封・密栓された清涼飲料水たる豆乳を除く)、おからドーナツ等
23納豆製造業納豆を製造する営業
24麺類製造業麺類を製造する営業(複合型そうざい製造業又は複合型冷凍食品製造業に該当するものを除く)
25そうざい製造業通常副食物として供される煮物、焼物、揚物、蒸し物、酢の物若しくはあえ物又はこれらの食品と米飯その他の通常主食と認められる食品を組み合わせた食品を製造する営業。そうざいには、例えば、衣をつけるなどの加工はされているものの油で揚げていないコロッケ等のように、喫食するには購入者等による最終的な調理が必要な、いわゆるそうざい半製品が含まれる。
26複合型そうざい製造業そうざい製造業を行う者がHACCP に基づく衛生管理を行う場合に限り、そうざい製造業と併せて食肉処理業、菓子製造業、水産製品製造業(魚肉練り製品(魚肉ハム、魚肉ソーセージ、鯨肉ベーコンその他これらに類するものを含む)の製造に係る営業を除く)又は麺類製造業に係る食品を製造する営業 
27冷凍食品製造業そうざい製造業に係る食品を製造し、その製造された食品の冷凍品を製造する営業。対象は、あくまで「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)において規格基準が定められている冷凍食品の製造であり、製造に当たっては当該規格基準に適合する必要がある。
28複合型冷凍食品製造業冷凍食品製造業を行う者がHACCP に基づく衛生管理を行う場合に限り、冷凍食品製造業と併せて食肉処理業に係る食肉の処理をする営業又は菓子製造業、水産製品製造業(魚肉練り製品(魚肉ハム、魚肉ソーセージ、鯨肉ベーコンその他これらに類するものを含む)の製造に係る営業を除く)若しくは麺類製造業に係る食品(冷凍品に限る)を製造する営業
29漬物製造業漬物を製造する営業又は漬物と併せて漬物を主原料とする食品※を製造する営業

※漬物を主原料とする食品の例:高菜漬を使用した高菜漬炒め、味付けザーサイ、味付けメンマ等
30密封包装食品製造業密封包装食品(レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰その他の容器包装に密封された食品)であって常温で保存が可能なもの(常温で保存した場合においてボツリヌス菌その他の耐熱性の芽胞を形成する嫌気性の細菌が増殖するおそれのないことが明らかな食品であって厚生労働省令で定めるものを除く※)を製造する営業

※除外される(許可不要な)食品:食酢(すし酢を含む)及びはちみつ等
31食品の小分け業専ら菓子製造業、乳製品製造業(固形物の製造に係る営業に限る)、食肉製品製造業、水産製品製造業、食用油脂製造業、みそ又はしょうゆ製造業、豆腐製造業、納豆製造業、麺類製造業、そうざい製造業、複合型そうざい製造業、冷凍食品製造業、複合型冷凍食品製造業及び漬物製造業において製造された食品を小分けして容器包装に入れ、又は容器包装で包む営業。ただし、調理や小売販売における小分けは対象とはならない。
32添加物製造業食品衛生法第十三条第一項の規定により規格が定められた添加物の製造(小分けを含む)をする営業
<食品衛生法上の許可業種>

営業許可業種の変更点

許可業種は以下のように、新たに設定されたもの、再編・統合されたもの、食中毒等のリスクが低いと考えられることから届出業種へ移行されたものがあります。

許可業種が、旧法からどのように変更されたかのイメージ図はこちらをご参考下さい。

営業許可業種の変更点

新たな許可業種

  • 水産製品製造業
  • 漬物製造業
  • 液卵製造業
  • 食品の小分け業
  • 複合型そうざい製造業
  • 複合型冷凍食品製造業

再編・統合された業種

  • 飲食店営業
  • 調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業
  • 菓子製造業
  • 清涼飲料水製造業
  • そうざい製造業
  • みそ又はしょうゆ製造業
  • 食用油脂製造業
  • 密封包装食品製造業

届出に移行された業種

  • 乳類販売業
  • 食肉販売業(包装食品)
  • 魚介類販売業(包装食品)
  • 氷雪販売業
  • 屋内設置の自動販売機(自動洗浄機能等を有するもの)
  • 冷凍・冷蔵倉庫業

など

手続の期限

法改正の前後で区分が変更となった場合、以下のように手続きを行う必要があります。

改正前の区分改正後の区分手続の期限
許可業種許可業種令和3年6月1日より以前に取得した許可は有効期限まで有効
許可業種届出業種令和3年6月1日時点で許可を取得している場合は保健所が把握しているため、改めて届出の手続きをする必要はない
許可業種以外許可業種令和6年5月31日までに許可を取得する必要がある(施行後3年間の経過措置期間)
<手続の期限>

届出制度の創設

HACCPに沿った衛生管理が義務化されたため、営業許可を必要とする業種以外の営業を行う場合であっても、行政がその所在を把握し、必要な指導を行うために、届出制度が創設されました。

営業許可と届出の違い

営業許可と届出の違いは下表のようになります。○がついているものは「適用有り」、「基準の遵守が必要」であることを表しています。

項目許可届出
施設基準
食品衛生責任者の設置
HACCPに沿った衛生管理
手数料
更新手続き
変更、廃業の届出
<営業許可と届出の違い>

届出が必要な業種

「営業許可業種」、「届出不要な業種」以外の全ての食品取扱施設(製造・加工・販売・貯蔵等)が届出の対象となります。例として以下のような業種で届出が必要になります。

(例)届出が必要な業種

旧許可業種であった営業

  • 魚介類販売業(包装済み魚介類のみの販売)
  • 食肉販売業(包装済み食肉のみの販売)
  • 乳類販売業
  • 氷雪販売業
  • コップ式自動販売機(自動洗浄・屋内設置)

販売業

  • 弁当販売業
  • 野菜果物販売業
  • 米穀類販売業
  • 通信販売・訪問販売による販売業
  • コンビニエンスストア
  • 百貨店、総合スーパー
  • 自動販売機による販売業(コップ式自動販売機(自動洗浄・屋内設置)及び営業許可の対象となる自動販売機を除く)
  • その他の食料・飲料販売業

製造・加工業

  • 添加物製造・加工業(法第一三条第一項の規定により規格が定められた添加物の製造を除く)
  • いわゆる健康食品の製造・加工業
  • コーヒー製造・加工業(飲料の製造を除く)
  • 農産保存食料品製造・加工業
  • 調味料製造・加工業
  • 糖類製造・加工業
  • 精穀・製粉業
  • 製茶業
  • 海藻製造・加工業
  • 卵選別包装業
  • その他の食料品製造・加工業

その他

  • 行商
  • 集団給食施設(1回20食以上)
  • 器具、容器包装(合成樹脂製)の製造・加工業
  • 露店、仮設店舗等における飲食の提供の内、営業と見なされないもの

届出が不要な業種

以下の業種は公衆衛生に与える影響が少ないことから届出は不要とされています。

  • 食品又は添加物の輸入業
  • 食品又は添加物の貯蔵のみ(冷蔵・冷凍倉庫業を除く)又は運搬のみ(冷蔵・冷凍車を含む)をする営業
  • 常温で長期間保存可能な包装された食品・添加物の販売業(調理機能のない常温保存可能な食品のみの自動販売機を含む)
  • 器具又は容器包装の製造業(合成樹脂以外の原材料が使用された器具・容器包装に限る)
  • 器具・容器包装の輸入業、販売業

施設基準の改正

営業許可業種の見直しに合わせて、施設基準も改正され、令和3年6月1日から適用されています。原則、「各営業に共通する基準」に適合していることに加え、「業種ごとの基準」にも適合している必要があります。さらに、生食用食肉やふぐを取り扱う施設については、それぞれの基準に適合する必要があります。

尚、令和3年6月1日時点で許可を受けている場合、許可の有効期間満了日までに新しい施設基準に適合する必要があります。

HACCPに沿った衛生管理

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程において、工程ごとに食中毒等の健康被害を引き起こす可能性のある危害要因を科学的根拠に基づいて管理する方法です。

HACCP制度化の対象となるのは、食品衛生法上の許可業種と届出業種です。許可又は届出を必要としない業種はHACCP制度化の対象外となります。

HACCPに沿った衛生管理には、「HACCPに基づく衛生管理」「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2つがあり、事業者の規模や業種等に応じてどちらかの方法を実施します。

HACCPに基づく衛生管理

以下の事業者は、「HACCPに基づく衛生管理」の対象となる事業者です。

該当する事業者は、コーデックスのHACCP7原則に基づき、食品等事業者自らが、使用する原材料や製造方法等に応じて計画を作成・管理します。厚生労働省のホームページに掲載されている「HACCP入門のための手引書」等を参考にして導入を図ることができます。

「HACCPに基づく衛生管理」の対象事業者

  • 大規模事業者
  • 複合型そうざい製造業
  • 複合型冷凍食品製造業
  • と畜場(と畜場設置者、と畜場管理者、と畜場者)
  • 食鳥処理場(食鳥処理業者(認定小規模食鳥処理業者を除く))

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

以下の事業者は、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象となる事業者です。

該当する事業者の方は、厚生労働省が公開している手引書を参考にして衛生管理計画を作成・実行・実行したことの確認・記録、を行います。手引書は、施設の業態や取り扱っている食品に近いものを選びます。

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象事業者

  • 小規模事業者
    • 飲食店営業
    • 食品取扱従事者の数が50人未満の事業場
    • 給食施設
    • パン製造業等(概ね5日程度の消費期限のもの)
    • 調理機能付き自動販売機営業
    • そうざい製造業
  • 当該店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理事業者
  • 容器包装食品(要冷蔵品)の販売業

など

行政書士しょうじ事務所では、飲食店営業許可申請のお手伝いをさせていただいております。許可申請についてお困りごとがありましたら、ぜひご相談ください。