農業|農地の貸借・売買は農地バンク経由が原則になります
令和7年4月から、農地の貸し借り・売買をする場合は、原則として、農地中間管理機構(以下、農地バンク)を介して行なわれることになります。
これまでは、各市町村が作成していた「農用地利用集積計画」による相対での貸借が中心でしたが、相対での貸借では農地の分散錯圃が解消されず、農地の集約化に限界がありました。このため、「農用地利用集積計画」と農地バンクが作成する「農用地利用配分計画」を「農用地利用集積等促進計画」に統合し、農地バンクによる農地の集約化を推進することになりました。
なお、令和7年4月以降も、農地法3条に基づいて農業委員会の許可を受け、権利設定を行なうことは従来と変わらず可能です。
農地中間管理機構(農地バンク)
農地バンクは、都道府県、市町村、農業団体等が出資して組織されている法人で、都道府県知事が県に1つに限って指定します。地域によって「農地バンク」「機構」「公社」などと呼ばれています。
農地バンクは、農地を貸したい人(農業をリタイアされる方や、規模を縮小したい方など)から農地を借り受け、耕作を希望する人(新規就農する方や、規模を拡大したい方)にまとまりのある形で農地を貸し付ける事業を行っています。
農地バンクを活用するメリット
農地バンクが農地を借り入れ、貸し付けを行った場合、一定の要件を満たす必要がありますが、貸し手・借り手に対して様々な支援措置が用意されています。
貸し手のメリット
農地バンクを介して農地を貸した方には、次のようなメリットがあります。
- 賃料は農地バンクから確実に振り込まれる
- 契約条件の調整は農地バンクが行なうため、貸し手自らが借り手と交渉しなくてよい
- 貸した農地は、貸付期間終了後、返却されるので安心できる
- 農地バンクに貸し付けた農地について、税制優遇が受けられる
など
税金の優遇措置
農地バンクに農地を貸し付けた場合、次のような税金の優遇措置を受けることができます。
- 所有する全農地を、新たに、まとめて農地バンクに貸し付けた場合、農地バンクに貸し付けた農地の固定資産税が2分の1に軽減される(10年以上の貸付は3年間、15年以上の貸付けは5年間軽減)
- 相続税、贈与税の納税猶予を受けている場合に、納税猶予の適用農地を貸借しても、農地バンクを介した貸借であれば、納税猶予が継続する
- 農地バンクを介して農地を売却した場合、800万円の譲渡所得の特別控除などの適用を受けることができる
など
借り手のメリット
農地バンクを介して農地を借りた方には、次のようなメリットがあります。
- まとまった農地を長期間、安定的に借り受けることができる
- 複数の所有者から農地を借りる場合であっても、賃料支払い契約事務について農地バンクが契約を一本にまとめてくれる
- 貸し手に相続が発生した場合は、農地バンクが対応してくれる
- 所有者不明農地も、農地バンクを通じれば最長40年間借り受けることができる
など
地域のメリット
農地バンクを活用して農地の集約化に取り組む地域には、次のようなメリットがあります。
- 機構集積協力金が交付される(使い道は地域で自由に決定できる)
- 農家負担ゼロで、基盤整備事業を実施することができる
機構集積協力金
機構集積協力金には、「地域集積協力金」と「集約化奨励金」の2つがあります。
「地域集積協力金」は、農地バンクを活用して、担い手への農地集積・集約化に取り組む地域に対して交付され、「集約化奨励金」は、農地バンクからの転貸等を受けて、農地の集約化に取り組む地域に対して交付されます。
農家負担ゼロの基盤整備事業
農地中間管理機構関連農地整備事業は、施工地域の全ての農地について、農地バンクが15年以上の借り入れをしていること等の要件を満たす場合に、農家負担ゼロで基盤整備ができる事業です。令和4年度からは、従来の区画整理に加え、新たに農業水利施設等の整備も行えるようになりました。
おわりに
行政書士しょうじ事務所では、農地転用の許可申請をはじめ、農業への新規参入や法人化(株式会社、合同会社の設立)のお手伝いなど、農業経営全般の支援をさせていただいております。お困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。