農業|生産緑地制度とは

生産緑地制度とは、 市街化区域内の農地を計画的に保全し、 緑豊かで良好な都市環境をつくることを目的として、都市計画に「生産緑地地区」を定める制度です。

生産緑地地区に指定されると、固定資産税が農地課税となるほか、相続税の納税猶予制度が適用されるなど、税制優遇措置を受けることができます。その一方で、農地として管理することが義務付けられ、建築物の建築や宅地の造成などの行為は原則できません。

一度指定を受けると、指定から30年経つか、その生産緑地で中心となって営農に従事している者が死亡したり、重い疾病で営農の継続が困難になるといったことがない限りは指定が解除されることはありません。

平成29年5月には生産緑地法の一部が改正されており、主な改正点は次のとおりです。

  • 生産緑地地区の面積要件(500m2以上)について、市区町村の条例により300m2まで下限面積を引下げ可能とした
  • 生産緑地地区内において、農作物等加工施設、農作物等直売所、農家レストランの設置を可能とした
  • 生産緑地地区の都市計画決定後30年経過するものについて、買取り申出可能時期を10年延長できる特定生産緑地制度を創設した

生産緑地地区の面積要件の引下げ

改正前は、生産緑地地区の規模要件は一団で500m2以上とされていたため、要件を満たさない小規模な農地は、農地所有者に営農の意思があっても、保全対象となりませんでした。

さらに、公共収用等に伴い、または複数所有者の農地が指定された生産緑地地区で一部所有者の相続等が発生し、生産緑地地区の一部の解除が必要となった場合に、残された面積が規模要件を下回ると、生産緑地地区全体が解除されることになります。

改正法では、小規模でも身近な農地を保全するために、条例により300m2まで下限面積を引き下げ可能としました。併せて、同一または隣接する街区内に複数の農地がある場合には、一団の農地等とみなして指定することが可能となりました。ただし、個々の農地はそれぞれ100m2以上であることが必要です。

生産緑地地区における建築規制の緩和

従来、生産緑地地区内で設置可能な建築物は、生産・集荷施設、生産資材の貯蔵・保管施設、休憩施設、などの農業用施設のみに限定されていましたが、法改正により、これらの施設に加えて、以下の施設も設置することが可能となりました。

  • 生産緑地内で生産された農産物等を主たる原材料とする製造・加工施設
  • 生産緑地内で生産された農産物等または①で製造・加工されたものを販売する施設
  • 生産緑地内で生産された農産物等を主たる材料とするレストラン

特定生産緑地制度

生産緑地の指定から30年経過すると、所有者は市区町村に買取り申出が可能になります。

特定生産緑地制度は、生産緑地地区の指定から30年が経過するまでの間に、今までどおりの生産緑地としての扱いをさらに10年間延長することを申し込むことができる制度です。延長から10年後には、再度延長を申し込むことも可能です。

特定生産緑地指定を受けないまま、指定から30年の申出基準日を経過した場合には、それ以後、特定生産緑地の指定を受けることができなくなるほか、固定資産税等が5年間をかけて引き上げられます。相続税納税猶予を受けている場合には、次の相続までは、現世代に限り猶予が継続されます。

なお、申出基準日を経過しただけでは、生産緑地の指定が解除されたことにはならないため、生産緑地の行為制限の規制は残ります。

生産緑地地区内の農地の所有者は税制上の軽減措置を受けることができる一方、自らによる耕作が要件とされていました。しかし、農業従事者の減少・高齢化が進む中、都市農地(=生産緑地)の所有者自らによる有効な活用が困難な状況も生じてきています。

農地を貸借する場合、農地法による法定更新(都道府県知事の許可を受けた上で、当事者が賃貸借契約を更新しない旨の通知をしない限り、従前と同一の条件で契約が更新される制度)の適用を受けるため、契約を更新しないことについて知事の許可がない限り農地は返ってきません。さらに、相続税納税猶予を受けている場合は、農地を貸借することで猶予が打ち切られ、猶予税額と利子税を納税しなければならないことから、都市農地の所有者が都市農地を貸したがらないケースがありました。

そこで、生産緑地を対象として「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が制定されました。これにより、生産緑地を貸借しても相続税の納税猶予は継続して適用されることとなりました。さらに、農地法の法定更新も適用されなくなるため、契約期間が経過すれば農地が戻ってくることになり、意欲ある農業者等へ農地の貸付けが安心して行えるようになりました。

また、これまでは企業などが都市農地において市民農園の開設を希望する場合には、地方公共団体等を経由して農地を借り受ける必要がありましたが、同法により都市農地所有者から直接農地を借り受けることができるようになりました。

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