農業|農事組合法人
農業を営むための法人を農業法人といいますが、その農業法人には、会社法が定める会社法人(株式会社や合同会社など)のほかに、農業協同組合法が定める農事組合法人の2種類があります。
農事組合法人の場合、法人設立にかかる費用や手続きは、会社法人の設立に比べて安価で容易です。また、一定の場合には会社法人よりも法人税の税率が低くなり、農地所有適格法人が行なう一定の事業に関しては事業税が非課税になります。
一方、農事組合法人が行なうことができる事業内容は農業に関連することに限られており、法人の構成員(組合員)の資格にも制限があるという点に注意が必要です。
農事組合法人の事業内容
農事組合法人が行なうことができる事業の内容は、農業協同組合法第72条の10の1号から3号に、次のように規定されています。
- 農業に係る共同利用施設の設置(当該施設を利用して行う組合員の生産する物資の運搬、加工又は貯蔵の事業を含む)又は農作業の共同化に関する事業
- 農業の経営(その行う農業に関連する事業であって農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他農林水産省令で定めるもの及び農業と併せ行う林業の経営を含む)
- 1及び2に附帯する事業
ここで、1号に規定されている事業を行なう法人を1号法人、2号に規定されている事業を行う法人を2号法人と呼んでいます。
1号法人は共同施設利用しかできず、2号法人は共同で農業の経営ができます。いずれか一方の事業を行なうか、両方を行なうかの選択は自由ですが、2号法人の場合は、組合員に出資をさせる出資型農事組合法人に限られます。
以上のように、農事組合法人が行なうことができる事業は、「農業および農業関連事業の付帯事業」に限定されています。
株式会社タイプの農地所有適格法人であれば、売上げの半分未満であれば農業と関係の無い事業もすることができますが、農事組合法人では認められていないのです。
その他農林水産省令で定めるもの
2号法人の事業内容のうち「その他農林水産省令で定めるもの」とは、次のことをいいます。
- 農畜産物の貯蔵、運搬又は販売
- 農畜産物若しくは林産物を変換して得られる電気又は農畜産物若しくは林産物を熱源とする熱の供給
- 農業生産に必要な資材の製造
- 農作業の受託
- 農村滞在型余暇活動に利用されることを目的とする施設の設置及び運営
- 農村滞在型余暇活動を行う者を宿泊させること等農村滞在型余暇活動に必要な役務の提供
- 農地に支柱を立てて設置する太陽光を電気に変換する設備の下で耕作を行う場合における当該設備による電気の供給
農事組合法人の設立
農事組合法人は、3人以上の農民が発起人となり、定款の作成・役員の選出等の設立に必要な行為を行なったあとに、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します。
法人の構成員となる組合員は、原則として農民に限られ、理事は全員農民でなければなりません。
法人として成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書および定款を添えて、行政庁に届出をしなければなりません。
組合員の資格
農事組合法人の組合員の資格は次のように規定されています。
農事組合法人の組合員たる資格を有する者は、次に掲げる者(農業経営農事組合法人以外の農事組合法人にあっては、第1号に掲げる者)で定款で定めるものとする。
1.農民(自ら農業を営む個人又は農業に従事する個人)
2.組合(農業協同組合又は農業協同組合連合会)
3.農地中間管理機構(当該農事組合法人に農業経営基盤強化促進法に基づいた事業に係る現物出資を行うものに限る)
4.当該農事組合法人からその事業に係る物資の供給若しくは役務の提供を受ける者又はその事業の円滑化に寄与する者であつて、政令(農業協同組合法施行令第40条)で定めるもの
おわりに
行政書士しょうじ事務所では、農地転用の許可申請をはじめ、農業への新規参入や法人化(株式会社、合同会社の設立)のお手伝いなど、農業経営全般の支援をさせていただいております。お困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。