輸出許可申請|輸出管理体制の構築

輸出者等は、輸出者等遵守基準に基づき輸出管理を行う必要があります。ここでは、輸出者等遵守基準に記載の内容も踏まえつつ、輸出者が適切に輸出管理をするために必要と考えられる組織内部の輸出管理体制の具体的な内容について説明します。

役割分担等

輸出管理体制構築のためには、経営トップ以下が輸出管理の必要性等を理解した上で、その主導の下、企業全体で取り組んでいく必要があります。輸出管理の実務を行う担当者および責任者を明確にすることを目的に、企業の業態や規模等によって実行可能な役割分担と体制を構築することが重要です。

(1)輸出管理体制

輸出管理を実施する上で必要となる、該非判定、取引審査、出荷管理を実施する部門及び責任者を体制図や一覧表などで明確にします。なお、技術の提供に係る取引審査にあたっては、業務上自社の従業員等に技術の提供をする場合であって、当該従業員等が特定類型に該当する場合、取引審査が必要となります。このため、技術の提供に係る取引審査にあたっては、事前に特定類型の該当性の確認が求められます。従業員等を受け入れる際には特定類型該当性の自己申告を求めるほか、既に勤務している従業員については兼業等の報告状況を確認するなど、人事担当部門と連携した確認手続が推奨されます。

(2)輸出管理に関わる担当部門

輸出管理に関わる各部門の役割を下表で見てみましょう。

担当部門説明
輸出担当部門・貨物の輸出又は技術の提供に責任を持つ部門。
・製品等の販売による輸出の場合は営業部門になり、技術の提供や技術サンプルの輸出の場合には技術部門になるケースが一般的。
・取引審査に必要となる用途や需要者等について情報を収集し、用途・需要者等の確認を輸出管理部門とともに実施する。
該非判定部門・自社開発品等を該非判定する部門。
・社外からの購入品については、購入先から入手した該非判定書等をもとに自社で該非判定を行う。
・輸出する貨物や提供する技術に詳しい知見が必要であり、技術部門が担当になる場合が一般的。
出荷部門・貨物等の出荷確認及び輸出等の手配を行う部門。
・出荷の際、規制貨物等が誤って輸出等されることを防止するために、同一性確認等の出荷管理を担当する。
輸出管理部門・社内における輸出管理の司令塔となる部門。
・輸出管理の運用ルールの作成・改廃、法令改正情報等の関係者への周知等の役割を持つ。
・取引審査、取引の承認、経済産業省への許可申請(輸出担当部門が許可申請を行う場合もある)なども行う。
・人事担当部門と連携し、特定類型該当者の把握や情報管理、必要な部門への社内連絡を行う役割を担う。
<輸出管理に関わる部門とその役割>

(3)輸出管理体制における責任者の役割と選任

輸出管理体制における各責任者の役割と選任については下表のようになります。それぞれの責任者を選任することが困難な場合には、代表取締役が最高責任者と取引審査の責任者を兼任する、或いは、代表取締役が全ての責任者を兼任することも考えられます。

責任者役割選任
最高責任者社内の輸出管理全体を統括し、企業として最終的な責任を負う。最高責任者としては組織を代表するもの、一般の企業であれば、代表取締役を最高責任者として定める必要がある。
該非判定の責任者リスト規制に該当するか否かの該非判定について最終的な責任を負う。業として輸出等を行うものは、該非判定の責任者を選任する必要がある。輸出する貨物又は提供する技術についての知識を持ち、法令に関して精通している者などから選任されることが望ましい。
取引審査の責任者該非判定や用途・需要者等確認をもとに取引を行うか否かの取引審査について最終的な責任を負う。取引の可否に関して、公正な判断を行う必要があるため、輸出担当部門(営業部門等)から独立して判断ができる立場であることが望ましい。また、組織として取引の最終判断を行うため、取締役等の中から選任することが求められる。
出荷管理の責任者
(設置は推奨)
同一性等確認等の出荷管理について最終的な責任を負う。出荷管理において不備があるときは、直ちに出荷を止める権限等を有する者であることが求められる。
<輸出管理体制における各責任者の役割と選任>

輸出管理内部規程(CP)の策定

輸出管理内部規程(CP)は、外為法等の関係法令を遵守し、法令違反を未然に防ぐための有効なツールです。経済産業省は、輸出管理内部規程を策定し、それに基づいて輸出管理を行うことを推奨しています。なお、輸出者等は輸出者等遵守基準に従うことが義務付けられている一方で、輸出管理内部規程は法的な規制ではなく、自主管理を強化するための任意のものです。

経済産業省への届出制度

任意とされている輸出管理内部規程は、経済産業省への届出制度があります。経済産業省から輸出管理の実施内容が適切と判断された場合には、以下のようなメリットがあります。

  • 包括許可が取得可能になる。(一般包括許可は除く)
  • 経済産業省から制度改正等のメールが逐次配信される。
  • 経済産業省のホームページに自主管理体制を整備した企業等として企業名が掲載される。(希望者のみ)

最新法令等の周知及び指導

輸出等の業務に従事する者に対し、最新法令等の周知及び指導を定期的に行うことが必要です。例えば、輸出令等の規制対象貨物等の改正があれば該非判定を見直す必要があり、外国ユーザーリストが改訂されれば需要者等確認の際に最新のリストを使用する必要がありるので、最新法令等の情報を収集し、タイムリーに周知等を行います。周知・指導の方法としては、輸出管理担当者から、Eメールでの通知、書面での通知、社内定期ミーティング等での通知等が考えられます。また、周知した内容を従事者が常に閲覧できる環境を作っておくことも必要です。

輸出等の業務に関わる子会社への指導等

子会社が、リスト規制品の輸出等の業務に関わる場合には、その子会社に業務を適正に実施させるため、指導、研修、子会社の業務体制及び業務内容の確認を行う社内体制と手続を定め、定期的に子会社に対する指導等を行うよう努めましょう。指導等の具体的な内容としては、最新の法令の周知その他関係法令の規定を遵守するための指導(改善の指導を含む)や適切な輸出管理を実施するために必要な知識及び技能を習得させるための研修の実施などが考えられます。子会社が、輸出者等の行う輸出等の管理に係る業務を全く実施しない場合、当該子会社は対象外です。一方、例えば、用途確認のための事前審査を実施している場合、その子会社は対象となります。

違反時の報告及び再発防止策

関係法令に違反したとき又は違反したおそれがあるときは、速やかに輸出管理の最高責任者(代表取締役等)に報告し、遅滞なく経済産業省へ報告することが必要です。また、違反が発生した場合には、再発防止のために必要な措置を講ずる必要があります。経済産業省では、報告内容を確認後、違反が明らかとなった場合、事後審査を行います。事後審査の目的は、「事実関係の解明」と「再発防止」です。事実関係の解明の結果、違反原因、実際の用途及び事後審査に対する協力の程度等を考慮の上、刑事罰、行政制裁、警告及び経緯書又は報告書の提出等の処分・対応が行われることがあります。

輸出管理を適切に運用し、維持するためには、「教育(研修)」「監査」「文書保存」の実施が重要です。

教育(研修)

輸出管理の必要性と重要性等を理解し、輸出管理を確実に実施するために、輸出管理に関わるすべての役員及び従業員対して、計画的に教育を行うようことが重要です。輸出者等遵守基準により、リスト規制貨物等を扱う輸出者等は、「教育(研修)」「監査」「文書保存」に努めることが求められています。

項目説明
対象者役員、幹部社員、管理職、実務従事者、転入者、新人社員を含めた全員
頻度年に1回以上
教育内容一般教育・・・基礎的な輸出管理の知識を習得させるためのもの
実務教育・・・社内での輸出管理業務の手続・運用に関して習熟させ、 適切に実施させるためのもの
テキスト自社に適したテキストを自社で作成することが推奨されるが、基礎的知識の習得のためのテキストとしては、経済産業省のホームページで公開されている説明会資料等を活用することも可能。
方法講義方式の集合教育、オンラインによるWeb教育、Eラーニング等。対象者を限定した階層別教育。
記録教育を実施した場合には、教育記録を作成し、保管する。
(教育記録項目例・・・教育実施日時、教育方法、講師名、受講者名)
<教育(研修)の概要>

監査

監査は、社内において、法令に基づき輸出管理が適切に実施されていることをチェックするためのもので、適切な監査により、法令違反が発見されることもあり、また体制改善のツールとしても活用でき、輸出管理にとって極めて重要です。輸出管理の運用状況確認のため定期的に監査を行うよう努めましょう。

項目説明
対象部門監査の対象は、輸出管理に関連する全ての部門。 (営業部門、技術部門、製造部門、出荷部門、輸出管理部門など)
実施部門監査を実施する部門は、事業の規模等の事情により変わる。(例・・・監査部門、輸出管理部門、最高責任者など)

※監査部門が実施する場合には、監査人が輸出管理についての知識を習得しておくこと。輸出管理部門が実施する場合、輸出管理部門を対象とした監査については、他部門(管理部門等)に監査を依頼する等の工夫が必要。
監査の頻度年1回以上

※監査の対象期間は、前回の監査期間と隙間のないように継続的に実施する。
実施方法輸出管理の各項目について、法令に則って確実に実施されていたか否かをチェックする。 (監査項目・・・輸出管理体制、該非判定、取引審査、出荷管理、教育、文書管理)

※監査チェックリスト等を作成し、監査項目に漏れのないように実施することも有効。 監査チェックリスト等の監査項目の詳細については、各社の状況に応じ作成する。
監査報告監査の実施後は、監査人は速やかに監査報告書を作成し、最高責任者に報告すること。法令違反が発覚した場合、経済産業省へ報告する必要がある。
改善・是正措置監査において、改善・是正が必要な項目がある場合には、監査人は担当部門に是正の措置を依頼し、対象部門は指示に従って是正をおこなう。
<監査の概要>

文書管理

違反発覚時や監査の際に、輸出管理が適切に実施されていることを実証するために、輸出管理に関わる輸出関係書類等の文書又はその記録媒体を保存しておくよう努めましょう。

項目説明
保存書類 (輸出関係書類等)輸出関係書類等とは、引合い等から出荷・船積み又は技術の提供までの一連の関係書類のすべてを指す。

(1)相手先から入手した書類
契約書、注文書、輸出依頼文書、返品承認書、打合せ議事録、等

(2)社内審査手続き書類
該非判定、用途・需要者等の確認を含む取引審査等の書類(特定類型該当性の確認に係る書類を含む)

(3)輸出通関書類
インボイス、輸出許可証、輸出許可通知書、船荷証券(B/L)、航空運送状(AWB)、等
文書保存期間貨物の輸出又は技術の提供日から、
(1)少なくとも7年間(武器及び大量破壊兵器等関連(輸出令別表第1及び外為令別表の1項~4項)のもの)
(2)少なくとも5年間(通常兵器関連等(輸出令別表第1及び外為令別表の5項~16項)のもの)

※採用時の誓約書等、従業員等の特定類型該当性を確認した記録については、該当の有無にかかわらず、これら従業員等への規制技術の提供が見込まれる期間は適切に保存することが望ましい。
保存方法紙媒体の原本以外に電子ファイルでの記録媒体での保存方法もある。 保管部門及び保管場所については、保存期間中に文書が紛失しないように、 また、文書を容易に閲覧できるように定めておくことが重要。
<文書管理の概要>