戸籍|婚外子を認知したときの戸籍

婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子を嫡出子(ちゃくしゅつし)と言うのに対して、婚姻関係にない男女間(事実婚の夫婦も含む)に生まれた子を非嫡出子といいます。

この非嫡出子を、父となるべき者が自分の子であると認めることを認知といいます。このページでは認知の方法や認知したときに戸籍にはどのように記載されるのかについてお伝えしていきます。

認知とは

婚姻関係にない男女間(事実婚の夫婦も含む)に生まれた非嫡出子は、父と法律上の親子関係がないため、扶養や相続の面で父から何の保護も受けることができません。父となるべき者と子の間に法律上の親子関係を成立させるために、父に自分の子であることを認めてもらう制度が認知です。

認知後に父と母が結婚すると、認知された子は嫡出子としての身分を取得します。これを婚姻準正といいます。また、父と母が婚姻後に、父に認知されて嫡出子となることを認知準正いいます。準正とは、非嫡出子が嫡出子の身分を取得することです。

認知の効果

子が父に認知されると、父と子の間に法律上の親子関係が成立し、お互いに扶養義務と相続権が生じます。つまり、父は子を扶養する義務があるため、養育費を支払わなければならず、また、父が死亡したときに子は父の相続人にとなるということです。さらに、認知によって、父と子の戸籍の身分事項欄には、父が子を認知した旨が記載されます。

注意点としては、父が子を認知したとしても、子は母の戸籍に在籍したままであり、父の姓を名乗ることにもなりません。子を父の戸籍に入れて、父の姓を名乗りたい場合は、家庭裁判所に子の氏の変更を申し立て、許可を得た後で、役所に入籍届を提出する必要があります。

認知の方法

認知の方法は大きく分けて、父が自分の意思で認知する任意認知と、子または母が認知しない父を相手に、家庭裁判所に認知を求める調停、裁判を申し立てる強制認知があります。

任意認知

任意認知とは、父が自分の意思で認知することです。父自身が役所に認知届を提出することで認知の効力が生じます。仮に父が未成年または成年被後見人であっても、法定代理人の同意なく認知することができます(民法第780条)。

胎児認知(民法第783条第1項)

子が胎児の時点でも認知することができます。これを胎児認知といい、この場合は母の承諾が必要です。

成人している子の認知(民法第782条)

成人している子を認知する場合は、その子本人の承諾が必要になります。

死亡した子の認知(民法第783条第2項)

父より先に子が死亡した場合でも、その子に直系卑属(父からみて、孫やひ孫)がいる場合に限り、死亡した子の任意認知も可能とされています。

死亡した子を認知することにより、父と子の直系卑属は直系血族の関係となり、お互いに扶養義務や相続権が生じます。ただし、直系卑属が成人している場合は、本人の承諾が必要になります。

遺言による認知(民法第781条第2項)

認知届ではなく、遺言により認知することもできます。

父が作成する遺言書に「○○を自分の子として認知する」などの文言を入れておくことで、父の死亡後、父と子の間に親子関係が生じます。これにより、子は父の遺産を相続する権利を得ます。

役所への届出は遺言執行者(遺言の内容を実現させるための手続きを行う人)が行い、届出により戸籍には子を認知した旨が記載されます。

強制認知

強制認知とは、子または母が認知しない父を相手に、家庭裁判所に認知を求める調停、裁判を申し立て、父の意思に反して子を認知させる法的手段です。

認知に応じない理由としては、養育費を払いたくない、認知したことが戸籍に記載されて身内に不倫したことがわかってしまう、などさまざまです。

父が認知に応じない場合、子やその法定代理人は父に対して認知調停を申し立てます。認知調停で父が合意すれば審判書などと共に役所に認知届を提出します。

調停でも合意に達しない場合は、家庭裁判所に対して認知の訴えを提起し、裁判において強制的に認知が決せられます。この認知の訴えの提起は、父の生存中または死亡後3年以内にしなければなりません(民法第787条)。

認知したときの戸籍

婚姻関係にない男女間の子は、出生届により母の戸籍に入り、母の姓を名乗ることになります。このとき、戸籍には父のことは何も記載されていません。

任意認知、強制認知のいずれによっても、役所に認知届を提出し受理されることで、父と子の戸籍の身分事項欄に認知された旨が記載されます。

例として、「任意認知されたときの子のいる母の戸籍」と、「任意認知した父の戸籍」を添付していますので、ご参考ください。

認知後の戸籍の注意点

子の戸籍の身分事項欄に記載された認知事項は、転籍等の戸籍の編製替えや、婚姻、縁組などによって他の戸籍に入った場合、新戸籍または他の戸籍に移記されなければならないとされています。

一方、父の戸籍の身分事項欄に記載された認知事項は、新戸籍や他の戸籍には移記されません。

つまり、父の新戸籍や他の戸籍だけを見ると、父に認知した子がいることはわからないということです。もちろん父の戸籍を遡れば認知した子の存在はわかりますが、相続人調査の際には見落とさないように注意が必要です。

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