農業|農作物栽培高度化施設

農地を農地ではないものに変える場合、農地法に基づく転用許可を得る必要がありますが、平成30年の農地法改正により、一定の基準を満たした場合には、転用許可を得ること無く、あらかじめ農業委員会へ届出を行なうことで、底面を全面コンクリート張りにした農業用ハウスなどの設置が可能になりました。

この施設のことを「農作物栽培高度化施設」といいます。

制定の背景には、近年の営農形態の多様化に伴い、地面が水平であることが求められる水耕栽培や収穫用ロボットの導入、農業用ハウス内の温度・湿度などの環境制御の徹底など、床面をコンクリート張りにしたいという要望が現場から出されていたことがあります。

農作物栽培高度化施設として認められるためには、次の要件を全て満たす必要があります。

  • 専ら農作物の栽培の用に供されるものであること
  • 周辺農地の日照に影響を及ぼすおそれがない高さの基準に適合すること
    • 棟高8m以内、軒高6m以内であること
    • 太陽光を透過しない素材で屋根・壁面を覆う施設である場合は、春秋分日の午前8時から午後4時までの間に、周辺農地に概ね2時間以上日影を生じないこと
  • 当該施設の設置に必要な行政庁の許認可を受ける見込みがあること
  • 設置されている施設が農作物栽培高度化施設であることを明らかにするための標識の設置等の措置が講じられていること
  • 施設からの排水について、放流先の管理者の同意を得ること
  • 借地に施設を設置する場合には、施設を設置することについて、土地の所有者の同意を得ていること

次のような場合には、農作物栽培高度化施設の用地が、農地法の「転用」に該当し、違反転用になります。違反転用を把握した農業委員会は都道府県知事等に報告し、都道府県知事等が原状回復命令を行い、農地へ復元することになります。

高度化施設用地の全部又は一部を農地以外の用に供する場合

たとえば、次のようなケースが該当します。

  • 農作物栽培高度化施設を撤去し、住宅や工場などの施設を設置する場合
  • 農作物栽培高度化施設の内部を直売所などとして利用する場合

農作物の栽培の用に供されないことが確実となった場合

次の場合には、「農作物の栽培の用に供されないことが確実となった場合」に該当します。

  • 農地法44条に規定される農作物の栽培を行うべき旨の勧告から相当の期限を経過してもなお当該施設において農作物の栽培が行われない場合
  • 当該施設の所有者等が、農地法44条による勧告で定める相当の期限を経過するよりも前に農作物の栽培を行わない意思を示した場合
  • 農地法32条3項に規定される施設所有者の所在確認の公示から6月を経過してもなお当該施設の所有者等が農業委員会に申し出ない場合
  • 農地所有適格法人が農地所有適格法人でなくなった場合において、国が当該法人の所有する高度化施設用地を買収するため、農業委員会が公示を行った場合

行政書士しょうじ事務所では、農地転用の許可申請をはじめ、農業への新規参入や法人化(株式会社、合同会社の設立)のお手伝いなど、農業経営全般の支援をさせていただいております。お困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。