農業|農事組合法人から株式会社への組織変更

農事組合法人制度は、その目的が農業生産の協業化を図ることであるため、法人が行なうことができる事業は、共同利用施設(農機具の共同所有、共同防除等)の設置及び農業の経営とそれに附帯する事業のみに限定されています。

しかし、事業を行なっていく中で、農業を営みつつ、さらなる事業の多角化を図りたいとして、制限のない他の法人類型に組織変更を検討する農事組合法人も出てきます。

このような場合のために、農業協同組合法の中には、農事組合法人から株式会社へ組織変更するための規定が設けられており、農事組合法人を解散することなく、組織変更をすることができます。

なお、株式会社への組織変更ができるのは農事組合法人のうち出資型農事組合法人(2号法人)で、非出資型農事組合法人(1号法人)は一般社団法人への組織変更が可能となっています。

株式会社と農事組合法人の特徴を比較すると下表のようになります。

株式会社農事組合法人
根拠法会社法農業協同組合法
資本金あり(1円以上)あり(出資制の場合は3円以上)
構成員1名以上農民3名以上
会社の基本方針の決定1株1議決権による株主総会の議決1人1票による総会の議決
役員①取締役1人以上(必置、株主外も可)
②監査役(任意・株主外も可)
①理事1人以上(必置、農民である組合員のみ)
②監事(任意、組合員外も可)
事業の制限制限なし
(農地所有適格法人の場合は農業・農業関連事業が売上高の過半)
農業経営(2号)法人の場合は、農業・農業関連事業に限定
定款認証必要不要
組織変更農事組合法人への変更は不可株式会社または一般社団法人に変更可

出資型農事組合法人から株式会社へ組織変更する際の手続きの流れは次のようになります。

組織変更計画の作成

組織変更計画には、次のような事項を定めます。

  • 組織変更後の株式会社の目的、商号、本店所在地、発行可能株式総数
  • 組織変更後の株式会社の定款で定める事項
  • 監査役や会計監査人の氏名又は名称その他の事項

総会招集の通知

株式会社への組織変更事項は重要事項なので、総会開催日の2週間前までに、会議の目的、組織変更計画の要領などを全組合員に通知しなければなりません。

総会の開催

株式会社に組織変更するためには、作成した組織変更計画について、総組合員の3分の2以上の多数の賛成による特別決議による承認が必要です。

なお、総会に先立ち、書面により組織変更に反対の意思表示をした組合員は、組織変更の決議の日から20日以内に書面によって持分の払戻しを請求することで、組織変更の日に農事組合法人を脱退することができます。

株式会社へ組織変更

組織変更計画で定めた組織変更の効力発生日に株式会社となります。

登記

組織変更の効力発生日から2週間以内に、農事組合法人の解散の登記と、株式会社の設立登記を行ないます。

組織変更の届出

組織変更後は、遅滞なく、行政庁に届出をしなければなりません。

行政書士しょうじ事務所では、農地転用の許可申請をはじめ、農業への新規参入や法人化(株式会社、合同会社の設立)のお手伝いなど、農業経営全般の支援をさせていただいております。お困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。