お酒の免許|輸出用清酒製造免許|日本酒の輸出拡大に向けた取組み

輸出用清酒製造免許は、「日本酒」の輸出拡大に向けた取組等を後押しするために設けられた免許制度で、一定の条件の下で、輸出用の清酒を製造する場合に限って一部の要件を緩和して付与される免許です。

酒類を製造しようとする場合には、酒税法に基づき、製造しようとする酒類の品目別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長から製造免許を受ける必要があります。

製造免許を受けるためには、税務署に製造免許の申請書を提出しなければなりません。税務署において 、申請者の法律の遵守状況や経営の状況 、食品等の輸出経験の有無、輸出先の確保 、製造技術能力、製造設備の状況などの要件について審査が行われ 、これらの要件を満たしていれば製造免許が付与されることになります。

この免許を取得することで、清酒製造に関心のある方が新たに輸出用の清酒製造事業に参入したり、これまで委託醸造により製造した清酒を輸出していた方が自社製品の輸出に切り替えたり、といったことができるようになります。

輸出用清酒製造免許で製造できるお酒

輸出用清酒製造免許で製造できる酒類は、酒税法上の清酒のうち、 米及び米こうじに国内産米のみを用いて国内で製造、容器詰めしたもの(地理的表示「日本酒」と表示することができるもの)に限定されています 。

さらに、この免許は、輸出するための清酒を自ら製造する方を対象とした免許であるため、国内に流通させることを目的として製造することはできません。

一方、以下の場合であって無償で提供する清酒については、輸出のために必要な行為であると考えられることから、国内への課税移出が認められています。

  • 国内で開催される輸出のための商談会等に使用する場合
  • 商社等の輸出業者へサンプルとして提供する場合
  • 国税局が実施する品質審査等に提出する場合

輸出用清酒製造免許を取得するためには、次のすべての要件を満たさなければなりません。

人的要件

申請者に、過去において法律違反や税金滞納の事実があるなど、規範意識に欠けているかを判断するための基準です。法人申請の場合は、役員全員について審査されます。

場所的要件

申請製造場が、酒場、旅館、料理店等と同一の場所でないことが必要です。なお、酒税の検査取締上、特に必要があると認められる場合には、製造場と酒場、旅館、料理店等とを壁、扉などで区分するよう求められる場合があります。

経営基礎要件

申請者の資金、経験、知識、経営状態などが十分に備わっているかを判断するための基準です。

たとえば、国税・地方税の滞納、銀行取引停止処分、繰越損失の資本金超過などがある場合、経営の基礎が薄弱であると認められ、要件を満たさないことになります。

さらに、輸出用清酒製造免許の申請では、申請者(従業員を含む)に食品等の輸出経験があることや、海外における取引先等の輸出先を確保していることが求められます。

製造技術・設備要件

清酒を製造するために必要な技術や設備などが備わっているかを判断するための基準です。

(1)技術的要件

申請者は、醸造・衛生面等の知識があり、かつ、保健衛生上問題のない一定水準の品質の酒類を継続的に供給することができ、不測の事態が生じた場合に対応できる能力を有していることが求められます。

なお、技術的要件は、製造計画・工程、技術者の経歴、人員、品質設計、品質管理、研修の体制等から総合的に判断されます。また、申請者の技術的能力は、必要な技術的能力を備えた者を雇用していれば足ります。

(2)設備要件

酒類の製造又は貯蔵等に必要な機械、器具、容器等が十分に備わっている又は十分に備えられることが確実であるとともに、製造場の申請場所への設置が工場立地法、下水道法、水質汚濁防止法、食品衛生法等製造場の設備に関する法令及び地方自治体の条例に抵触していない又は抵触しないことが確実であることが求められます。

なお、食品衛生法の営業許可など他の行政機関の許認可等が必要な場合があります。

輸出用清酒製造免許の申請には次の書類が必要になります。

必要書類留意事項
酒類製造免許申請書
「製造場の敷地の状況」法務局備付けの地図の写しを貼付し、申請製造場の敷地を朱書き等で明記すること
「建物等の配置図」敷地内における建物、設備等を明確に図示すること
「製造方法」・ 製造工程図、製造方法の概要等を明記すること
・ 仕込み配合について、各仕込ごとの「1仕込製造方法」を添付すること
「製造場の設備の状況」製造場の設備について、全て記載すること
「事業の概要」、「収支の見込み」、「所要資金の額及び調達方法」・ 原料の入手状況等を記載すること
・ 事業規模に沿ったもくろみ書を作成すること
・ 自己資金による場合は資金繰表又は資金の算出根拠説明書、融資による場合は金融機関の証明書又は融資者の原資内容を証明する書類を添付すること
酒類製造免許の免許要件誓約書誓約すべき者の漏れ(例:法人の監査役など)がないこと
申請者の履歴書申請者が法人の場合には、法人の監査役など、役員全員分を添付すること
法人の登記事項証明書及び定款の写し
契約書等の写し土地、建物、設備等が賃貸借の場合は賃貸借契約書等の写し、建物が未建築の場合は請負契約書等の写し、農地の場合は農地転用許可に係る証明書等の写し、その他土地、建物、設備等が自己の所有に属しない場合で、確実に使用できることが認められる書類
地方税の納税証明書・ 都道府県及び市区町村が発行する納税証明書(未納税額がない旨及び2年以内に滞納処分を受けたことがない旨の証明)をそれぞれ添付すること
・ 法人については、証明事項に「地方法人特別税」を含めること
最終事業年度以前3事業年度の財務諸表最終事業年度以前3事業年度分の貸借対照表及び損益計算書を添付すること(個人の場合は、収支計算書)
酒類の製造について必要な技術的能力を備えていることを記載した書類たとえば、製造技術責任者の履歴書、実技研修等の受講事績を証する書類など、客観的事実を明確にするものを添付すること
輸出に関する書類・ 食品等を輸出した経験があること(例:申請者の履歴書等)
・ 海外の取引先との契約書の写しなどにより、輸出先を確保できていることが確認できること(例:契約書の写し、取引承諾書等)
土地及び建物の登記事項証明書申請製造場に係る全ての土地及び建物の登記事項証明書を添付すること
申請者の酒類製造場についての書類所在地及び名称、免許酒類(品目別)、免許年月日、免許の期限、免許の条件が漏れなく記載されていること
その他参考となるべき書類

輸出用清酒製造免許が付与される場合、登録免許税の納付が必要です。登録免許税の額は、免許1件につき15 万円です。

輸出用清酒製造免許には、条件や期限が付されます。免許条件に違反したり、免許期限の経過後に清酒を製造したりすると罰則の適用を受けることがあります。

製造免許の条件

輸出用清酒製造免許には、「製造する酒類の範囲」について、「輸出するために製造するものに限る。」という条件が付されます。したがって、国内に流通させることを目的として清酒を製造することはできません。国内に流通させた場合は、免許条件違反となり、免許取消の対象となります。

製造免許の期限

輸出用清酒製造免許には、通常の酒類製造免許と同様、新規に付与された際に期限が付されます。免許の期限は、原則として、免許する日の属する会計年度(4月1日から翌年3月31 日)の末日(1月から3月までの間において免許する場合は、翌会計年度の末日)に設定されます。

期限が経過すると免許は消滅しますので、引き続き輸出用清酒の製造をしようとする場合には、「免許期限の延長」の手続きが必要です。

なお、既に清酒製造免許を受けている方が輸出用清酒製造免許を受けた場合には、期限は付されません。

免許期限の延長

免許期限の延長を受けようとする場合は、免許期限の到来前に、品質審査を受けるとともに、免許を受けた税務署に「酒類製造免許の期限延長申出書」を提出する必要があります。国税局が行う酒類の品質審査の結果に問題がない、税の滞納がないなど一定の要件を満たしている場合には、1年間、免許の期限が延長されます。

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