相続|空き家の活用方法

空き家問題の深刻化にともない、多くの自治体では空き家相談窓口が設けられ、空き家バンクや補助金に関する情報を提供してもらえます。また、空き家対策を専門とするNPOや民間企業も増えていますので、自己判断ではなく、これらのサポート窓口に積極的に相談して、地域の需要にあった空き家の活用方法を考えていきましょう。

空き家の活用方法としては、古民家ならカフェやレストラン、宿泊施設、貸しスタジオなど、広い土地なら青空駐車場やコインパーキング、太陽光発電など、活用方法は多様化しています。

一般的な活用方法である「売る」「貸す」「更地にして土地を売る・貸す」のメリット・デメリットを下表で比較してみましょう。

活用法メリットデメリット
売る・すぐに現金収入が得られる。
・固定資産税などの維持費がかからなくなる。
・管理の手間と時間がかからなくなる。
・思い入れのあるものを失う。
・仲介手数料や測量費用などがかかる。
・譲渡所得税がかかる。(*1)
貸す・思い入れのある家を壊さずに済む。
・定期的に家賃収入が得られる。
・人に住んでもらうことで家の機能を維持できる。
・将来的に自分が住むこともできる。
・リフォームや修繕費用がかかる。
・管理の手間と時間がかかる。
・借手がつかないと収入が得られない。
・貸借人とトラブルになる可能性がある。(*2)
更地にして土地を売る・貸す・家の管理の手間と時間がかからなくなる。
・立地によっては、駐車場などにも活用できる。
・空き家の解体や整地に費用がかかる。
・固定資産税が高くなる。
・貸地にする場合は管理が必要になる。

不動産の売却には手間と時間がかかります。査定から引き渡しまでの全体の流れを把握しておきましょう。

1.相場価格を知る
空き家所在地周辺の相場価格を自分で調べる。調べ方としては、固定資産税評価額から算出する方法と、国土交通省の不動産取引価格を調べる方法があります。
2.査定を依頼する
中古住宅を扱っていて、空き家の所在地にネットワークをもつ不動産会社をいくつか探し、実際に話を聞いてみてから数社に絞り込んで査定を依頼する。査定してもらったら、その根拠を説明してもらうこと。
3.媒介契約を結ぶ
査定価格やその根拠、担当者の対応などから、仲介を依頼する不動産会社を選んで契約する。
4.売却活動を開始する
査定価格を基に売り出し価格を決め、不動産会社はWebサイトなどに掲載して売却活動を開始する。売却後のトラブル防止のために、売り出し前に、不具合を洗い出すインスペクションを受けておくとよい。

※インスペクションとは
専門家が屋根や外壁、室内などを主に目視で確認し、劣化状況や欠陥の有無を調査すること(任意調査)。「住宅診断」や「住宅検査」とも呼ばれる。インスペクションで建物の不具合を洗い出し、契約書に記載しておけば、大きな契約不適合責任を負うリスクは抑えられる。不動産会社に相談してみること。
5.購入希望者への対応・交渉
希望者には不動産会社の担当者が物件を案内し、見学してもらう。このとき、家財道具が片付いていると管理が行き届いていると好印象につながりやすい。
6.測量・解体(必要な場合)
境界の確定が済んでいなければ、土地家屋調査士に依頼して確定測量を行う。更地にして引き渡すのが条件なら、解体業者に依頼して解体する。
7.売買契約を結ぶ
購入希望者と条件の調整がついたら、重要事項説明を行って売買契約を結ぶ。売主には、契約不適合責任があるので、契約内容と物件の状況をしっかり確認する。買主はここで手付金を支払う。

※売主の契約不適合責任
売主が引き渡した目的物が種類や品質の点で契約内容と異なっていたり、数量が不足していた場合(契約内容に適合していなかった場合)、売主が、損害賠償請求や契約解除のほか、修補や代替物の引渡しなど完全な履行を請求されることや、代金の減額を請求される責任を負うというものです。買主がこれらの請求をするためには、引き渡された商品が契約に適合していないことを知ってから一年以内に、売主にその旨を通知する必要があります。
8.引き渡し前の確認
引き渡し後のトラブルを防ぐため、決済日より前に、売主、買主、不動産会社の立会いのもと、物件の確認を行う。物件状況等報告書や付帯設備表などを見ながら、1つ1つ現地で確認する。
9.決済・登記手続、引き渡し完了
買主が売主に残代金を支払う。売主は所有権移転登記に必要な書類・鍵を受け渡す。不動産会社に仲介手数料を支払う。
10.確定申告(売却した翌年)
売却で譲渡益が発生して納税する場合や、「空き家特例」などの適用を受けるためには、売却の翌年に確定申告をする。

リースバックとリバースモーゲージ

リースバックとは、自宅をリースバック運営会社に売却して代金を受け取る一方で、その会社と賃貸借契約を締結して毎月家賃を支払い、契約で定めた期間、自宅に住み続けることができるしくみです。

一方、リバースモーゲージは、自宅を担保に借り入れができる高齢者向けのローン商品です。毎月の支払いは利息のみで、債務者の死亡後に相続人が自宅の売却もしくは現金一括で元本を返済します。

どちらも自宅を活用して資金調達ができます。また、タイミングは異なりますが最終的には自宅を売却するため、不動産が残らないのも共通点です。リースバックとリバースモーゲージの主な特徴を下表で比較してみましょう。

リースバックリバースモーゲージ
概要自宅をリースバック運営会社に売却して売却代金を受け取る一方で、その会社と賃貸借契約を締結して毎月家賃を支払って、契約で定めた期間、自宅に住み続けることができるしくみ。自宅を担保に借り入れができる高齢者向けのローン商品であり、毎月の支払いは利息のみで、債務者の死亡後に相続人が自宅の売却もしくは現金一括で元本を返済するしくみ。
所有権移転自宅を売却して賃貸に切り替えた時点で所有権が運営会社に移転する。債務者の死亡後、自宅を売却して元本を返済する仕組みのため、債務者が生きている間は自宅の所有権は移転しない。
資金の受け取り方自宅の売却代金自宅を担保に入れて融資を受ける
月々の支払い毎月の家賃を支払う毎月利息を支払う
メリット・住宅ローンが残っていても申し込むことができる。
・売却代金は一時金として支払われ、資金の用途は問われない。
・売却後も自宅に住み続けることができる。
・自宅を買い戻すことができる「買戻し特約」を付けて契約すれば、将来、買戻しも可能。
・自宅に住み続けながら、自宅を担保に融資を受けられる。
・生存中は返済がないか、あっても利息のみの返済で負担が軽い。
・本人が亡くなったときは、配偶者が契約を引き継ぎ住み続けることもできる。
注意点・自宅の所有権を失うので自分のものでなくなる。
・自分のものではないので、自由に設備を改変・
設置することができない。
・リースバックでの売却額は通常に売却する価
格より低めに設定されることが多い。
・賃貸契約が定期借家契約の場合、満了後に居
住を継続できる保証はない。再契約ができな
い場合には立ち退かなければならない。
・利用できる物件のエリアや評価額などに条件がある。
・不動産の評価額は年1回程度見直され、利用限度額も変動する。
・亡くなったときに家を売却して返済するため遺族に家を残せない。
・金利変動リスクがある。
・売却資金がローン残債よりも少ない場合、残った債務が相続人に引き継がれる(リコース型の場合)。ノンリコース型なら債務が残っても相続人に返済義務は生じないが、リコース型に比べて適用金利が高い傾向にある。

契約相手の事業者によって、提供しているサービスの内容や利用条件が異なりますので、契約内容は細かく確認し、自分に合うサービスを選ぶようにします。

空き家を賃貸に出す場合、借主が見つかったあとも貸主としての管理業務があります。自分で管理することもできますし、不動産会社などに管理業務を委託することもできます。いずれにせよ、どんな人が借りるかわからない、不動産会社とトラブルになる可能性もある、という賃貸経営のリスクをよく理解しておく必要があります。

賃貸の契約形態として普通借家契約と定期借家契約を下表で比較してみましょう。

項目普通借家契約定期借家契約
契約方法・書面がほとんどだが、書面でも口頭でも可。・書面で行う。定期借家契約であることを書面を交付して説明する必要がある。
契約期間・自由に定めることができる。
・「契約期間が1年未満」「期間の定めがない」「法定更新をした」ときは、「期間の定めのない建物賃貸借」という契約になる。
・自由に定めることができる。
・1年未満でも可であり、「期間の定めのない建物賃貸借」には該当しない。
契約更新・正当な理由がない限り、更新される。
・期間満了の1年前から6ヶ月までに貸主が通知しなかった場合は自動的に更新される(法定更新)。
・契約期間の満了により契約は終了する。
・契約を継続したい場合は、再契約を結ぶ。
中途解約・正当な理由がない限り、貸主からの解約はできない。
・借主からの中途解約は特約があれば可能。
・「期間の定めのない建物賃貸借」の契約の場合、借主はいつでも解約可能。
・借主からの中途解約は減速できないが、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情があれば可。
・貸主からの中途解約は正当な理由がない限りできない。
<普通借家契約と定期借家契約の比較>

貸した家が確実に戻ってくるのが定期借家契約のメリットです。期限付きで貸し出すので、将来、家族が使ったり、更地にしたりすることもできます。

DIY型賃貸借

DIY型賃貸借とは、借主(入居者)の意向を反映して住宅の改修を行うことができる賃貸借契約や賃貸物件のことをいい、借主自ら改修する場合や専門業者に発注する場合など、工事の実施方法は様々です。貸主・借主の双方に次のようなメリットがあります。

貸主のメリット

  • 現状のまま賃貸できるので修繕の費用や手間がかからない
  • 借主負担でDIY工事を行うため長期入居が見込まれる
  • 借主のDIYによって設備等の価値が上がる可能性がある

借主のメリット

  • 自分好みの改修ができ、持ち家感覚で居住できる
  • DIY工事費用を負担する分、相場より安く借りられる
  • DIY工事部分は原状回復義務をなしとすることもできる

上記のように、貸主・借主双方にメリットはあるものの、借主(又は借主が依頼した施工業者)が貸主の所有物に手を加えることになるので、工事内容や明渡し時の原状回復の有無など、トラブルが発生しないように契約時にしっかりと取り決めをしておくことが重要です。

サブリース

サブリース契約は、サブリース業者(不動産会社、リノベーション会社、介護系事業者など)がアパート等の賃貸住宅をオーナーから一括して借り上げるため、一定の賃料収入が見込めることや、管理の手間がかからないことなど、オーナーにとってのメリットがある一方で、近年、賃料減額をめぐるトラブルなどが発生しています。サブリース契約をする場合は、契約の相手方から説明を受け、契約内容や賃料減額などのリスクを十分理解してから契約する必要があります。

住宅セーフティネット制度

高齢者、低所得者、子育て世帯等は家賃滞納や孤独死などの心配から入居を断られることが多くあります。このような住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として空き家を登録し、要配慮者の住宅確保を促進するための制度です。登録する住居は一定の要件を満たす必要がありますが、家主は改修費や家賃補助などを受けることができ、要配慮者も低廉な家賃で住宅を確保することができます。

空き家を解体して更地にし、「更地として売却する」「借地として貸し出す」「アパートなどを建てて賃貸経営を始める」「駐車場にする」「コンテナを設置して貸倉庫経営を始める」など様々な活用方法が考えられます。土地をどのように利用するかは、その土地がある地域の需要を考え、外部にもよく相談して決めるようにしましょう。

信頼できる解体業者を選ぶ

解体工事は事故の危険もあるので、信頼できる業者に任せたいものですが、なかには悪質な業者もあります。次のような解体業者の情報をできるだけ集めて、どの業者に依頼するか、慎重に判断するようにしましょう。

  • きちんとした事務所を構えているか確認する
  • これまでの施行実績などをホームページで確認する
  • 業者の現地調査に一緒に立会って、能力や人柄を知る
  • 違法な事業内容で行政処分等を受けたことがないか自治体に履歴を確認する

解体費用の見積書

複数の業者から解体工事の見積書を取得し、内容を比較します。金額は税込みか、建物のm2数などにずれはないか、解体すべき建物や付帯物の数は正しいか、別途費用や工事前の注意事項は記載されているか等をチェックします。解体費用を左右する要因はさまざまですが、以下のような場合には、解体費用は高くなります。

  • 家の構造が頑丈
  • 坪数が大きい、階数が多い、地下室がある
  • アスベストが含まれている
  • 家財道具が残っている
  • 植木・庭石などが多い
  • カーポートやブロック塀がある
  • 道路幅や作業スペースが狭い
  • 交通量や人通りの多い道路に面している
  • 地中埋没物が存在した

解体工事の補助金

自治体の解体補助金を利用する場合は、解体工事前に申請し、交付が決定してから着工します。その後、完了報告書を提出し、補助金が交付されます。詳細は自治体のホームページなどで確認してみましょう。