相続|遺産を勝手に処分したらどうなる?

平成30年の法改正により、遺産分割前に相続人の中の誰かが勝手に遺産を処分(売却したり、預金を引き出したり)してしまった場合、処分をした相続人を除いた共同相続人全員の同意があれば、処分された財産を「遺産」とみなして遺産分割をすることができる制度が創設されました(民法906条の2)。法改正前は、遺産分割前に処分された遺産は遺産分割の対象とすることができなかったため、他の相続人は取得できる遺産が減ってしまい、不公平が生じていました。

法改正によるこの新しい制度は、2019年7月1日以降に開始した相続に対して適用されます。2019年6月30日以前に開始した相続に対しては改正前のルールが適用されます。

遺産分割前に遺産を処分した相続人がいる場合の共同相続人の相続分はどのようになるか、次の例を用いて計算してみます。

預貯金を引き出されたとき

被相続人の預貯金を、遺産分割前に相続人の中の1人が勝手に引き出した場合の計算例です。


父(被相続人)の遺産は預金1,500万円である。これを被相続人の子A、子Bの2人が法定相続分(2分の1)にしたがって相続する。子Aは父から生前贈与500万円を受け取っている。さらに子Aは、相続開始後、ひそかに500万円を父の預金から引き出していた。

・遺産分割の対象財産:1,500万円(預金)+500万円(特別受益)=2,000万円
・子Aの相続分:2,000万円x2分の1ー500万円(特別受益)=500万円
・子Bの相続分:2,000万円x2分の1=1,000万円

子Aは引き出した預金を取得したものとみなすので、各々の最終的な取得分は以下のようになります。子Bは残っている預金全額を取得することができ、公平な結果となります。

・子A=500万円(特別受益)+500万円(引き出した預金)=1,000万円
・子B=預金1,000万円

財産を売却されたとき

被相続人の財産の一部を、遺産分割前に相続人の中の1人が勝手に売却した場合の計算例です。

例:
父(被相続人)の遺産は、預金1,000万円と骨董品(時価)500万円である。これを被相続人の子A、子Bの2人が法定相続分(2分の1)にしたがって相続する。子Aは父から生前贈与1,000万円を受け取っている。さらに子Aは、相続開始後、遺産である骨董品を勝手に売却していた。

・遺産分割の対象財産:1,000万円(預金)+1,000万円(特別受益)+500万円(骨董品)=2,500万円
・子Aの相続分:2,500万円x2分の1ー1,000万円(特別受益)=250万円
・子Bの相続分:2,500万円x2分の1=1,250万円

子Aは売却した骨董品を取得したものとみなすので、最終的な取得分は以下のようになり、公平な結果となります。

・子A=骨董品500万円ー子Bへの代償金250万円+生前贈与1,000万円=1,250万円
・子B=預金1,000万円+子Aからの代償金250万円=1,250万円