農業|農用地区域からの除外手続(農振除外)

農地にはランクがありますが、その中でも「農用地区域内の農地」は生産性が高く、将来にわたって農地として維持しておきたいとされる別格の優良農地です。イメージしやすいところだと、辺り一面に田んぼが広がっているような場所が「農用地区域内の農地」に指定されています。

農用地区域内の農地は、農地として確保しておきたい農地なので、原則として農地転用は認められていませんが、やむを得ない事情により転用する場合は、転用の許可申請の前に、農用地区域から除外する手続きが必要になります。この手続きを「農振除外」とよんでいます。農用地区域から除外されたあとに、農地転用の手続きに進むことができます。

ただし、農振除外の申出は随時受け付けられているわけではなく、年に数回(市町村により異なります)など限られた締切日ごとに処理されています。さらに、除外されるまでの期間もおおよそ半年ほどかかりますので、長期にわたる手続きとなります。

「農用地区域」とは、農業振興地域のうち、今後おおむね10年以上の長期にわたり、農業上の利用を確保すべき土地の区域のことであり、主に次のような基準に基づいて設定されます。

  • 集団的に存在する農地(概ね10ha以上のまとまり)
  • ほ場整備事業などの対象地
  • 農用地区域の土地の保全または利用上必要な土地改良施設用地
  • 農用地区域の土地に隣接する農業用施設用地
  • その他農業振興を図るための必要な土地

農用地区域の用途区分

「農用地区域」に設定されている土地は、農業上の用途(「農地」「採草放牧地」「混牧林地」「農業用施設用地」)が定められています。定められている用途とは異なる用途で利用する場合には、用途区分の変更手続きが必要です。

その他の区域(農振白地)

農業振興地域のうち、農用地区域以外の土地の区分は、「その他の区域(農振白地)」となり、農振法による土地利用の制限はありません。ただし、農地以外の利用をする場合は、農地転用の許可申請が必要です。

農用地区域から除外するためには、主に、次の要件を満たしていなければなりません。

  • 他に代替する土地がないこと
  • 農地の集団化、農作業の効率化に支障を及ぼすおそれがないこと
  • 農用地の利用集積に支障を及ぼすおそれがないこと
  • 土地改良施設の機能に支障を及ぼすおそれがないこと
  • 土地改良事業等の工事完了後8年が経過していること
  • 都市計画法や農地法など、他法令や規制の許可見込みがあること

他に代替する土地がないこと

農用地区域内の農地以外に利用できる土地がなく、他の土地を選定することができないという明確な理由が必要です。さらに、除外する面積は事業の目的からみて必要最小限の面積であることが求められます。

農地の集団化、農作業の効率化に支障を及ぼすおそれがないこと

集団的農用地に囲まれていない縁辺部の土地であれば良いですが、農地に囲まれている中の一部の農地を転用すると、農作業の効率に支障があるかもしれません。

その他にも、農業用水路が改廃されるなど周辺の農業関連施設に影響がないことや、日照、通風、雨水・汚水等の放流により農業への影響が生じないことが求められます。

影響が考えられる場合は、適切な対策を講じることができなければなりません。

農用地の利用集積に支障を及ぼすおそれがないこと

認定農業者や特定農業法人などの担い手の農用地の利用に支障がないことや、認定農業者や特定農業法人などが経営する一団の農用地の集団化を損ねたり、効率的・安定的な農業経営に支障を及ぼさないことが求められます。

土地改良施設の機能に支障を及ぼすおそれがないこと

ため池、防風林、かんがい排水施設、農道等の機能に支障が生じないことや、用排水の停滞、汚濁水の流入、地盤沈下などの影響がないことが求められます。

土地改良事業等の工事完了後8年が経過していること

土地改良事業等の完了後8年以上経過していなければなりません。

都市計画法や農地法など、他法令や規制の許可見込みがあること

具体的な事業計画があり、事業の実施にあたって、農地転用や開発行為などの許可の見込みがあることが必要です。これらの許可の見込みがないと、農振除外は認められないことになります。

行政書士しょうじ事務所では、農地転用の許可申請をはじめ、農業への新規参入や法人化(株式会社、合同会社の設立)のお手伝いなど、農業経営全般の支援をさせていただいております。お困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。