法定後見開始までの手続きの流れ
法定後見制度を利用したい場合は、家庭裁判所に成年後見等選任申立てを行う必要があります。各地域の家庭裁判所によって多少異なりますが、一般的な手続きの流れをお伝えします。
家庭裁判所への申立て
申立ては、本人の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所に行ないます。地域によっては電話での事前予約が必要な場合や、診断書の類型によって書類の事前提出が必要な場合もあります。
申立てができる人
申立ては誰でもできるわけではありません。申立てをすることができる人は、法律で次のように定められています。
- 本人
- 配偶者
- 4親等以内の親族
- 任意後見人、任意後見受任者、任意後見監督人
- 検察官
- 市区町村長(申立人のいない方の場合)
など
申立てに必要な書類
申立てには主に次の書類が必要になります。具体的な必要書類は、申立てを行なう家庭裁判所に確認するようにします。
- 申立書
- 申立事情説明書
- 財産目録・資料
- 収支予定表・資料
- 親族関係図
- 候補者事情説明書
- 親族の意見書
- 医師の診断書・診断書付票
- 本人情報シート
- 戸籍謄本
- 住民票
- 登記されていないことの証明書
など
申立てに必要な費用
申立てには、申立手数料や登記嘱託手数料、鑑定費用(不要な場合もある)などの費用がかかります。これらの申立てにかかる費用は、原則として、申立人の負担となります。
なお、経済的に余裕がない方については、市区町村による助成を利用できる場合があります。詳しくは市区町村の窓口に相談してみましょう。
審理
申立て後は、必要書類がそろっているか、必要事項が全て記入されているかなどの書類審査が行なわれます。
必要に応じて、申立ての内容などについて、本人から意見を直接伺う「本人調査」をする場合や、成年後見人等候補者の適格性に関する調査も併せて行なわれる場合があります。
また、審理の参考とするため、家庭裁判所の判断により、本人の親族に対して、申立ての概要や後見人等候補者について伝え、これらに関する意向を照会する場合があります。
さらに、申立時に提出する診断書とは別に、鑑定が行なわれる場合があります。鑑定とは、本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定するための手続きのことで、必要かどうかは家庭裁判所が判断します。必要と判断された場合は、申立人の負担により、鑑定費用(5~10万円程度)を家庭裁判所へ納めます。後見・保佐の場合は法律上、原則、鑑定が必要ですが、診断書の内容などを総合的に考慮して、鑑定が省略されることもあります。
審判
鑑定や調査が終了した後、家庭裁判所は後見等の開始の審判をし、もっとも適任と思われる成年後見人等を選任します。審判の内容は、申立人、本人、成年後見人等に書面で通知されます。
なお、本人が必要とする支援の内容などによっては、候補者以外の専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職や法律または福祉に関する法人など)が成年後見人等に選任されることもあります。
確定
審判書が成年後見人等に届いてから2週間以内にどこからも不服申立てがされない場合は、後見等開始審判の法的な効力が確定します。
なお、この2週間という期間は、「本人には後見人が不要だ」という不服申立てを行なうことができる期間です。後見人を別の人に変更してほしいという内容の不服申立てをすることはできません。
後見登記
後見等開始審判の確定後、審判内容を登記してもらうよう家庭裁判所から東京法務局に依頼がなされ、所定の内容(法定後見の種類、後見人の氏名、住所、被後見人の氏名、本籍、住所など)が登記されます。登記された内容を証明するのが「後見登記事項証明書」で、これが、後見人であることの証明書になります。
後見登記事項証明書
後見登記事項証明書は、成年後見人等であることの証明書となり、金融機関との各種取引や、不動産の売買契約、介護サービス利用契約など、成年後見人等として行なうほぼ全ての手続きにおいて必要となる書類です。
東京法務局の後見登録課の窓口、全国の法務局・地方法務局(支局・出張所は不可)の戸籍課の窓口で取得できます。郵送請求もできますが、郵送の取り扱いは東京法務局のみとなります。
後見登記事項証明書の交付を請求できる者としては、代理権等の公示の要請とプライバシー保護の要請と調査の観点から、「本人、成年後見人等、成年後見監督人等、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人その他一定の者」に限定されています。
成年後見人等に就任後の初回報告
登記が完了すると、裁判所より成年後見人等に通知書が送付される(確定後2週間~1ヶ月程度かかる)ので、成年後見人等はその指示にしたがって財産目録等を作成し、成年後見人等に就任後の初回報告を家庭裁判所に行なうことになります。