契約|公証人による保証意思確認手続き

法人や個人事業主が事業用の融資を受ける場合に、その事業に関与していない親戚や友人などの第三者が安易に保証人になってしまい、その結果、多額の債務を負って生活の破綻に追い込まれてしまうという事態が生じていました。

そのような事態を防ぐために、個人が事業用の融資の保証人になろうとする場合には、あらかじめ公証人と直接面談し、主債務の内容や保証人になることの意味、そのリスクを理解しているかを確認した後、公正証書(保証意思宣明公正証書)を作成しなければ、保証契約の効力が生じないとする規定が設けられました。これが公証人による保証意思確認手続きです。

公証人による保証意思確認の手続きは、次のような流れで行なわれます。

公証役場に行く

保証人になろうとする人は、保証契約の前に公証役場に出向いて、保証意思確認の手続きを行なうことが原則です。

保証意思確認手続きが終わると、保証意思宣明公正証書が公証人によって作成されます。この保証意思宣明公正証書は、保証契約締結の日の前1ヶ月以内に作成されていることが必要です。

なお、この手続きは代理人に依頼することができません。保証人本人が出頭して、公証人から意思確認を受けなければなりません。

保証意思の確認

公証人からは主に、次のような点について確認されます。

  • 保証人になろうとする人が、保証意思を有しているか
  • 保証をしようとしている主債務の具体的な内容を認識しているか
  • 保証をすることで自らが代わりに支払いなどをしなければならなくなるという大きなリスクを負担するものであることを理解しているか
  • 主債務者の財産・収支の状況等について主債務者からどのような情報の提供を受けたか
  • 保証人になろうと思った動機・経緯 など

所要の手続きを経て、保証意思が確認された場合には、公正証書(保証意思宣明公正証書)が作成されます。なお、保証人の保証意思を確認することができない場合には、公証人は公正証書の作成を拒絶することになります。

主債務者の事業と関係の深い次のような人は、保証意思確認の手続きは不要とされています。

  • 主債務者が法人である場合
    • その法人の理事、取締役、執行役、議決権の過半数を有する株主など
  • 主債務者が個人である場合
    • 主債務者と共同して事業を行なっている共同事業者や、主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者(※配偶者は、法律上の配偶者に限られる)

保証人が保証のリスクを十分に把握できるように、次のような情報を保証人に対して提供しなければなりません。

保証契約締結時の情報提供義務

事業のために負担する債務について保証人になることを他人に依頼する場合には、主債務者は、保証人になるかどうかを判断するための情報として、次の情報を提供しなければなりません。

このルールは、事業用融資に限らず、売買代金やテナント料など融資以外の債務を保証する場合にも適用されます。

  • 主債務者の財産や収支の状況
  • 主債務以外の債務の金額や履行状況等に関する情報
  • 担保として提供するもの(例:ある土地に抵当権を設定するのであれば、その内容)

上記の情報提供義務に違反した場合、保証人は次の要件を満たしていれば、保証契約を取り消すことができます。

  • 保証人が主債務者の財産状況等について誤認したとき
  • 主債務者が情報を提供しなかったこと等を債権者が知り、または知ることができたとき

主債務の履行状況に関する情報提供義務

債権者は、保証人から請求があった場合には、主債務の元本、利息および違約金等に関する次の情報を提供しなければなりません。このとき、主債務者の同意は必要ありません。

なお、この情報請求ができるのは、主債務者から委託を受けた保証人(法人も含む)に限られます。

  • 不履行の有無(弁済を怠っているかどうか)
  • 残額
  • 残額のうち弁済期が到来しているものの額

主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務

債務者が分割金の支払いを遅延する等したときに一括払いの義務を負うことを「期限の利益の喪失」といいます。

主債務者が期限の利益を喪失すると、遅延損害金の額が大きくふくらみ、早期にその支払いをしておかないと、保証人としても多額の支払いを求められることになりかねません。

そのため、保証人が個人である場合には、債権者は、主債務者が期限の利益を喪失したことを債権者が知ったときから2ヶ月以内にその旨を保証人に通知しなければならないとされています。

2ヶ月以内に通知をしなかったときは、債権者は、期限の利益を喪失したときからその後に通知を現にするまでに生じた遅延損害金については、保証債務の履行を請求することはできません。

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