ビザ・在留資格|高度専門職1号

高度専門職の資格は、就労活動を行う者のうち、法務省令で定められた一定の基準(学歴、職歴、年収などの項目ごとに設定されたポイントの合計数)を満たす者にのみに許可される在留資格です。出入国管理上の優遇措置を与えることにより、高度外国人材の日本への受入促進を図ることを目的として設けられました。

高度専門職には、「高度専門職1号」と「高度専門職2号」の2種類があり、初回の申請では「高度専門職1号」の資格で一律5年の許可が与えられます。「高度専門職1号」の活動を3年継続すると「高度専門職2号」への移行が可能となります。

在留資格「高度専門職1号」に該当する活動は、次のように定められています。

高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であって、我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるもの
イ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導若しくは教育をする活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営し若しくは当該機関以外の本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導若しくは教育をする活動
ロ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
ハ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動

「高度専門職1号」の資格は、上記のようにイ、ロ、ハの3種類に分類され、活動範囲も指定書に記載された内容のみに限定されます。「イ」は主に「教授」「研究」「教育」に相当する活動、「ロ」は主に「技術・人文知識・国際業務」に相当する活動、「ハ」は主に「経営・管理」に相当する活動と重複します。

高度専門職1号イの活動

本邦の公私の機関との契約に基づいて、大学等の教育機関で教育をする活動や、民間企業の研究所で研究をする活動などが該当します。また、これらの活動と併せて、教育や研究の成果を活かして事業をおこし、自ら経営することも可能です。

高度専門職1号ロの活動

本邦の公私の機関との契約に基づいて、自然科学・人文科学の分野に関する専門的な知識・技術を必要とする業務に従事する活動が該当します。

たとえば、所属する企業において技術者として製品開発業務に携わる一方で、セールス・プロモーション等の企画立案業務を行なう活動などが認められます。また、これらの活動と併せて、これらの活動と関連する事業をおこし、自ら経営することも可能です。

高度専門職1号ハの活動

会社の経営や、弁護士事務所・監査法人事務所などを経営・管理する活動などが該当します。また、これらの活動と併せて、これらの会社・事務所の事業と関連のある事業をおこし、自ら経営することも可能です。

法務大臣が指定する本邦の公私の機関

「高度専門職1号」の場合、「法務大臣が指定する」本邦の公私の機関に所属して、業務に従事しなければなりません。

したがって、たとえば、ソフトウェアの開発業務に従事する「高度専門職1号ロ」の在留資格をもつ外国人が、別の会社に転職する場合は、「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」が変更になるため、転職後も引き続きソフトウェアの開発業務に従事するとしても、在留資格変更許可申請が必要になります。

研究、研究の指導若しくは教育をする活動

「教授」、「教育」の在留資格とは異なり、活動する場を教育機関に限定していないので、たとえば、民間企業の社内研修で教育をする活動も該当します。

当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営

主たる活動の研究の成果や知識・技術を活かしてベンチャー起業を経営するなどの活動が想定されています。ただし、「当該活動と併せて」と規定されているので、主たる活動を行なわず、それらの付帯的な活動のみを行なうことは認められません。

「高度専門職1号」は、次のような出入国管理上の優遇措置が与えられています。

  • 複合的な在留活動の許容
  • 在留期間「5年」の付与
  • 在留歴に係る永住許可要件の緩和
  • 配偶者の就労
  • 一定の条件の下での親の帯同
  • 一定の条件の下での家事使用人の帯同

複合的な在留活動の許容

通常、許可された1つの在留資格で認められている活動しかできませんが、高度外国人材は、たとえば、大学での研究活動と併せて関連する事業を経営する活動を行うなど複数の在留資格にまたがるような活動を行うことができます。

在留期間「5年」の付与

在留期間は、在留資格ごとに複数の種類が設けられており、外国人の在留状況や活動内容等に応じて決定されますが、高度人材については、法律上の最長の在留期間である「5年」が一律に決定されます。

在留歴に係る永住許可要件の緩和

永住許可を受けるためには、原則として引き続き10年以上日本に在留していることが必要ですが、3年間継続して70点以上を保持した状態で高度外国人材としての活動を引き続き3年間行っている場合や、高度外国人材の中でも特に高度と認められる方(80点以上の方)については、1年間継続して80点以上を保持した状態で高度外国人材としての活動を引き続き1年間行っている場合に永住許可の対象となります。

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配偶者の就労

高度人材の配偶者が「教育」、「技術・人文知識・国際業務」等に該当する活動を行なおうとする場合は、高度人材の配偶者として「特定活動33号」の在留資格で行なうことができるので、学歴や職歴の要件を満たす必要はありません。

なお、高度人材本人と同居し、かつ、日本人と同等額以上の報酬を受けることが必要です。

一定の条件の下での親の帯同

就労を目的とする在留資格で在留する外国人の親の受け入れは原則として認められていませんが、次の(1)または(2)のいずれかに該当する場合には、以下の要件を満たせば、高度人材外国人またはその配偶者の親(養親を含む)の入国・在留が認められることになります。

なお、この場合の親の在留資格は「家族滞在」ではなく、「特定活動34号」で申請する必要があります。

(1)高度人材外国人またはその配偶者の7歳未満の子(養子を含む)を養育する場合
(2)高度人材外国人の妊娠中の配偶者または妊娠中の高度人材外国人本人の介助等を行う場合

親の帯同が認められるための要件

  • 高度人材外国人の世帯年収(高度人材外国人本人とその配偶者の年収を合算したもの)が800万円以上であること
  • 高度人材外国人と同居すること
  • 高度人材外国人またはその配偶者のどちらかの親に限ること

一定の条件の下での家事使用人の帯同

外国人の家事使用人の雇用は、在留資格「経営・管理」、「法律・会計業務」等で在留する一部の外国人に対してのみ認められるところ、高度人材外国人については、以下の要件を満たせば、外国人の家事使用人を帯同することが認められます。

なお、この場合の家事使用人の在留資格は「特定活動2号の2」で申請する必要があります。

家事使用人の帯同が許容されるための要件

①外国で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する場合の条件(入国帯同型)
  • 高度人材外国人の世帯年収が1,000万円以上あること
  • 帯同できる家事使用人は1名まで
  • 家事使用人に対して月額20万円以上の報酬を支払うことを予定していること
  • 高度人材外国人と共に本邦へ入国する場合は、帯同する家事使用人が本邦入国前に1年以上、当該高度人材外国人に雇用されていた者であること
  • 高度人材外国人が先に本邦に入国する場合は、帯同する家事使用人が本邦入国前に1年以上、当該高度人材外国人に雇用され、かつ、当該高度人材外国人が本邦入国後、引き続き当該高度人材外国人または当該高度人材外国人が本邦入国前に同居していた親族に雇用されているものであること。
  • 高度人材外国人が本邦から出国する場合、共に出国することが予定されていること
② ①以外の家事使用人を雇用する場合(家庭事情型)
  • 高度人材外国人の世帯年収が1,000万円以上あること
  • 帯同できる家事使用人は1名まで
  • 家事使用人に対して月額20万円以上の報酬を支払うことを予定していること
  • 家庭の事情(申請の時点において、13歳未満の子または病気等により日常の家事に従事することができない配偶者を有すること)が存在すること

「高度専門職1号」の在留資格を取得するためには、次の基準に適合している必要があります。

申請人が出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(平成二十六年法務省令第三十七号)第一条第一項に掲げる基準に適合することのほか、次の各号のいずれにも該当すること。
一 次のいずれかに該当すること。
イ 本邦において行おうとする活動が法別表第一の一の表の教授の項から報道の項までの下欄に掲げる活動のいずれかに該当すること。
ロ 本邦において行おうとする活動が法別表第一の二の表の経営・管理の項から技能の項までの下欄に掲げる活動のいずれかに該当し、かつ、この表の当該活動の項の下欄に掲げる基準に適合すること。
二 本邦において行おうとする活動が我が国の産業及び国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこと。

第1号の基準

第1号は、「高度専門職1号」の在留資格を取得できる外国人の要件について定めています。

出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令第一条第一項に掲げる基準に適合

この基準省令には、「高度専門職1号」の活動資格イ、ロ、ハの種類ごとに、ポイント計算の諸条件などが定められています。さらに、活動資格ロとハについては、年収が300万円以上あることが条件とされており、ポイントだけではなく年収の条件も満たす必要があります。

法別表第一の一の表の教授の項から報道の項

「教授」「芸術」「宗教」「報道」の活動のいずれかに該当することが必要です。

法別表第一の二の表の経営・管理の項から技能の項

「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」の活動のいずれかに該当することが必要です。

この表の当該活動の項の下欄に掲げる基準に適合すること

高度専門職のポイント計算表で70点以上得点するだけでなく、行おうとする活動に該当する在留資格の基準適合性も必要ということです。

たとえば、申請人が「経営・管理」の活動をおこなおうとする場合は、申請人自身がポイント計算表で70点以上得点していることと、「経営・管理」の基準適合性(事業所が存在することと、2名の常勤職員または資本金・出資金が500万円以上あること等)を満たしていることが必要です。

第2号の基準

「本邦において行おうとする活動が我が国の産業及び国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合」とは、外国人の受入による産業界や日本人の就職、労働条件などに及ぼす影響の有無や程度、教育関係への影響、公共の安全確保に与える影響、対外関係への配慮や治安、社会秩序に与える影響等の観点から、申請人に「高度専門職」の在留資格を付与することが相当でないと認める場合のことをいいます。

「高度専門職」の在留資格をもつ外国人の配偶者が、日本で就労するためには次のような方法があります。

  • 高度人材の扶養を受ける配偶者として入国し、資格外活動許可を受ける
  • 高度人材の就労する配偶者として入国する
  • 就労資格を取得して入国する

高度人材の扶養を受ける配偶者として入国し、資格外活動許可を受ける

高度人材の扶養を受ける配偶者として入国した場合はそのままでは就労することはできませんので、別途「資格外活動許可」を受け、その許可の範囲内で就労することが可能です。

資格外活動許可の取扱いについては、在留資格「家族滞在」で在留する者と同様の取扱い(週28時間以内の包括的許可(風俗営業等を除く))となります。なお、高度人材の扶養を受ける子についても同様の扱いとなります。

高度人材の就労する配偶者として入国する

高度人材に対する優遇措置の一つとして、高度人材の配偶者について、所定の要件を満たした上で、在留資格「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」又は「興行」(演劇等の興行に係る活動以外の芸能活動)に該当する就労活動を認めることとしています。

この就労活動は資格外活動許可とは異なり、週28時間以内などの時間制限はありませんので、フルタイムでの就労が可能です。

就労資格を取得して入国する

高度人材の「配偶者」としての身分関係に基づいて入国するのではなく、配偶者自身が就労活動を内容とする在留資格(「教育」、「技術・人文知識・国際業務」など)を取得して入国すれば、その在留資格に応じた就労活動が可能です。

2023年4月から「特別高度人材制度(J-Skip)」が導入され、ポイント制によらず、学歴または職歴と年収が一定の水準以上であれば「高度専門職」の在留資格が付与され、「特別高度人材」として、より拡充した優遇措置が認められることになりました。

行政書士しょうじ事務所では、外国人の方が日本に入国、在留するために必要な各種の査証(ビザ)・在留資格取得(新規/更新)のためのサポートをおこなっております。

査証・在留資格の取得手続きについてお困りごとがありましたら、ぜひご相談ください。