輸出許可申請|貨物の輸出・役務取引の許可申請
経済産業大臣の許可が必要となる規制貨物・規制技術の輸出許可申請についてお伝えします。
許可申請の流れ
輸出しようとする貨物や提供しようとする技術が、リスト規制又はキャッチオール規制に該当した場合、経済産業省に許可の申請を行う必要があります。経済産業省では、輸出者等から許可の申請を受理後、安全保障上の観点(国際的な平和並びに安全の維持を妨げるおそれのある用途に使用されないことが確からしいか否か、等)から審査を行い、「許可」、「条件付き許可」又は「不許可」が判断されます。
注意点
経済産業省における審査期間は、原則として申請の受理から90日以内となっており、該当項番及び取引の状況等によって審査の期間は変わります。提出書類に不備があった場合は、書類を輸出者等が修正する期間はこの審査期間には含まれないので、十分余裕を持って申請を行う必要があります。審査期間が90日を超える場合は、経済産業省から申請者に対して、事前に連絡されます。
許可申請手続きと提出書類
許可申請には、「個別許可」と「包括許可」の2つがあります。
個別許可申請
個別許可申請とは、個々の契約ごとに許可の申請を行うことです。個別許可を申請する場合は、必要な書類を用意して電子申請(NACCS外為法関連業務)で許可申請を行います。電子申請を利用するためには、事前手続が必要となります。利用申込から事前手続が完了するまで3~4週間かかるので、早期に準備をしておく必要があります。
提出書類と申請窓口
申請に必要な提出書類と申請窓口は、リスト規制の該当項番と仕向地によって異なります。経済産業省の安全保障貿易管理ホームページに申請書類・窓口一覧表が掲載されていますので、確認のうえ準備をしましょう。なお、申請窓口には、経済産業省本省及び各地域の経済産業局(通商事務局又は沖縄総合事務局含む)があります。キャッチオール規制に基づく許可申請の窓口は、経済産業省本省になります。
包括許可申請
輸出等の許可は、本来、個々の契約ごとに、安全保障面からの審査を経て判断されます。しかし、輸出者等自身が輸出管理の体制を整備し、審査機能を自主管理の下で担える場合には、個々の契約ごとに個別許可を申請することなく、一定の範囲について包括的に許可を受けることができる「包括許可制度」があります。包括許可制度としては、5種類の包括許可があり、それぞれに許可の要件等を満たす必要があります。また、特定取引においても、許可条件の範囲内において包括許可を適用することは可能です。
種類 | 内容 |
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一般包括許可 | 貨物・技術の機微度が比較的低い品目について、輸出令別表第3の地域(グループA)向けを限定に、一定の仕向地・品目の組合せの輸出等を包括的に許可する制度 |
特別一般包括許可(特一包括) | 貨物・技術の機微度が比較的低い品目について、輸出令別表第3の地域を除く地域向けを含んだ一定の仕向地・品目の組合せの輸出等を包括的に許可する制度 |
特定包括許可 | 継続的な取引関係を行っている同一の相手方に対する輸出等を包括的に許可する制度 |
特別返品等包括許可 | 日本で使用するために輸入された輸出令別表第1の1項に該当する物(武器)又はその物に内蔵された外為令別表の1項に該当する技術(プログラム)であって、不具合による返品、修理又は異品のためのみに輸出する物や技術について一括して許可する制度 |
特定子会社包括許可 | 日本企業の子会社向け(50%超資本)に対する一定の品目の輸出等について包括的に許可する制度 |
注意点
包括許可証さえ持っていれば、自由に輸出が出来ると考えてはいけません。包括許可の適用は、包括許可の範囲や許可条件を慎重に確認、判断した上で使用することが必要であり、包括許可による輸出等は、内部管理規程等に従って自主的に適切な輸出管理を行うことが前提です。
輸出許可申請前に実施すべきこと
リスト規制貨物・技術の輸出等においては、その用途が大量破壊兵器等の開発等でないことを確認した上で、許可申請をしなければなりません。
調査事項
輸出許可申請の前に、下表のような項目を慎重に調査します。
調査事項 | 内容 |
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需要者等の存在 | ・輸出者等及び最終需要者の存在及び身元は明らかか ・兵器等の開発または製造を行っていない(行ったことがない)か ・関係者に軍、兵器製造者等はいないか |
貨物等の用途・仕様 | ・貨物等の用途に関する明確な説明はあるか ・事業内容、技術レベルから見て、貨物等を必要とする合理的理由はあるか |
貨物等の設置場所等の態様・据付等の条件 | ・設置場所又は使用場所は明確か ・設置場所等は、軍関係の近隣または高度の機密が要求されている地域ではないか ・輸送、設置等について過剰な安全装置・処置は要求されていないか |
貨物等の関連設備・装置等の条件・態様 | ・貨物等が使用される装置、同時に扱う原材料についての説明があるか ・上記の装置・原材料との組み合わせは、用途に照らして合理的、整合的か ・異常に大量のスペアパーツ等の要求はないか ・通常必要とされる関連装置の要求はあるか |
表示、船積み、輸送ルート、梱包等における態様 | ・輸送時等の表示・船積みについて特別な要請はないか ・製品及び仕向地から見て、輸送ルートに異常はないか ・輸送時の梱包及び梱包の表示が輸送方法・仕向地からみて異常はないか |
貨物等の支払対価等・保証等の条件 | ・支払対価・条件・方法などにおいて異常に好意的な提示がなされていないか ・通常要求される程度の性能等の保証の要求はあるか |
据付等の辞退や秘密保持等の態様 | ・据付、指導等の通常予想される専門家の要請はあるか ・最終仕向地、製品等について過度の秘密保持の要求はないか |
許可が不要となる特例
リスト規制に該当している場合は輸出等の許可が必要ですが、特例として、輸出等の許可が不要になる場合があります。
貨物の特例
貨物の輸出に関しては、無償特例と少額特例があり、条件に該当すると輸出許可が不要となります。ただし、別表第1の1項の貨物(武器)には適用されません。
無償特例(輸出令4条第1項第2号ホ及びへ)
無償告示に該当する場合は、輸出の許可が不要です。無償告示とは、経済産業省大臣が告示で定める「無償で輸出すべきものとして無償で輸入した貨物」及び「無償で輸入すべきものとして無償で輸出する貨物」を定める件のことを指します。
(1)「無償で輸出すべきものとして無償で輸入した貨物」の例
- 日本から輸出された貨物で、日本において修理された後の再輸出
- 日本の博覧会等で出品された貨物で、博覧会終了後の返送
- 日本に輸出した者への返送 輸出令別表第4の地域以外からの輸入
- 他の貨物を運搬するために輸入した貨物で、輸入後の返送、など
(2)「無償で輸入すべきものとして無償で輸出した貨物」の例
- 他の貨物を運搬するために輸出する貨物で、輸出した後に輸入すべきもの、など
少額特例(輸出令第4条第1項第4号)
リスト規制貨物が下表の②、③又は⑤に該当する場合には、規定された金額の範囲内で輸出許可が不要となります。
貨物区分(輸出令別表の項目) | 少額特例・適用額 |
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①第1の1項~4項貨物 | 適用されない |
②第1の5項~13項貨物のうち③以外 | 100万円以下 |
③「第3の3の規定により経産省大臣が定める貨物(別表第3の3告示)」 | 5万円以下 |
④第1の14項貨物 | 適用されない |
⑤第1の15項貨物 | 5万円以下 |
⑥第1の16項貨物 | 適用されない |
注意点
- 適用額は契約の総額であり、船積みの回数にかかわらず、契約書記載のリスト規制貨物の該当項番の括弧ごとの総額に基づいて判断される。
- 輸出令別表第3の地域以外の場合は、大量破壊兵器等や通常兵器の開発等に用いられるおそれがある場合は、適用されない。
- 仕向地が、北朝鮮、イラン、イラク(別表第4の地域)の場合は、適用されない。
技術の特例
技術の提供に関しては、主に下表のような特例があります。(貿易関係貿易外取引等に関する省令第9条第2項)
種類 | 内容 |
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公知の技術(第2項第9号) | 新聞、書籍等、既に不特定多数の者に対して公開されている技術を提供する取引 |
基礎化学分野の研究活動(第2項第10号) | 基礎化学分野の研究活動において技術を提供する取引 |
工業所有権の出願又は登録(第2項第11号) | 工業所有権の出願または登録のために必要な最小限の技術を提供する取引 |
貨物の輸出に付随して提供される使用に係る技術(第2項第12号) | 貨物の輸出に付随する技術で、当該貨物の操作、修理等のために必要最小限のものを需要者に提供する技術 |
プログラムの提供に付随して提供される使用にかかる技術(第2項第13号) | プログラムの提供に付随する技術で、当該プログラムのインストール、修理等のために必要最小限のものを提供する取引 |
市販のプログラム(第2項第14号) | 設計、製造または使用に係る市販のプログラムに関する取引 |
おわりに
行政書士しょうじ事務所では、NACCS外為法関連業務の利用者IDを取得し、経済産業省への申請者届出(登録)の手続きを完了させておりますので、NACCSによる代理申請を行うことができます。
輸出許可や輸出承認、役務取引の許可申請、該非判定書の法令確認など、輸出申請手続きに関してお困りごとがありましたら、ぜひご相談ください。