建設業|事業承継等の認可制度
従来、建設業者が事業の譲渡・合併・分割を行なった場合、従前の建設業許可を廃業すると共に、新たに建設業許可を取り直す必要がありました。
しかし、廃業日から新たな許可日までの間に、契約金額500万円以上(建築一式工事においては1,500万円以上)の建設業を営むことのできない空白期間が生じること、新規申請のために新たな申請手数料がかかることなどの不利益が生じていました。
そこで、改正建設業法(令和2年10月1日施行)において、事業承継を行なう場合は事前の認可を受けること、相続の場合は死亡後30日以内に相続の認可を受けることで、空白期間を生じることなく、建設業許可を承継することができるようになりました。これが「事業承継等の事前認可制度」です。
事業承継の認可
事業承継(事業譲渡・合併・分割)を行なう場合は、あらかじめ事前の認可を受けることで、空白期間を生じることなく、建設業者としての地位の全部を承継することができます。なお、事業承継の認可の審査においては、承継者(事業を引き継ぐ者)が許可要件等を備えていることが必要です。
異業種間の承継も可能で、同一業種であっても一般・特定の区分が同じであれば承継できます。ただし、一部の業種のみを承継することは認められていません。
たとえば、次のような場合は、本制度による承継が可能です。
地位承継の前の承継元が保有する建設業許可 | 地位承継の前の承継先が保有する建設業許可 | 地位承継の後の承継先が保有する建設業許可 |
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・土木業(特定) ・鉄筋業(一般) ・舗装業(一般) ・造園業(一般) | ・建築業(特定) ・鉄筋業(一般) ・大工業(一般) ・左官業(一般) | ・土木業(特定) ・鉄筋業(一般) ・舗装業(一般) ・造園業(一般) ・建築業(特定) ・大工業(一般) ・左官業(一般) |
事業承継の対象外となる場合
承継者は、被承継者の建設業のすべてを承継する必要がありますが、両者が有している建設業許可の種類によっては、承継できない場合があり、承継日より前に一部廃業届の提出が必要になる場合があります。
たとえば、地位承継の前の承継元と承継先が下表のような建設業許可を有している場合、一般建設業の許可を受けている者が、同一業種で特定建設業の許可を有している者の地位を引き継ぐことはできないため、事前認可制度による承継の対象外となります。
この場合は、承継日よりも前に、承継者または承継先のどちらかが、鉄筋業の一部廃業をすることにより、本制度による承継が可能となります。
地位承継の前の承継元 | 地位承継の前の承継先 |
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・土木業(特定) ・鉄筋業(特定) ・舗装業(一般) ・造園業(一般) | ・建築業(特定) ・鉄筋業(一般) ・大工業(一般) ・左官業(一般) |
同様に、下表のように、特定建設業の許可を受けている者が、同一業種で一般建設業の許可を有している者の地位を引き継ぐ場合も、事前認可制度による承継の対象外となります。
この場合においても、承継日よりも前に、承継者または承継先のどちらかが、鉄筋業の一部廃業をすることにより、本制度による承継が可能となります。
地位承継の前の承継元 | 地位承継の前の承継先 |
---|---|
・土木業(特定) ・鉄筋業(一般) ・舗装業(一般) ・造園業(一般) | ・建築業(特定) ・鉄筋業(特定) ・大工業(一般) ・左官業(一般) |
法人成りによる事業承継
個人事業主が法人成りを行ない、認可申請を行なう場合は、事業譲渡による申請となります。
法人成りの場合、認可申請の前にまず、法人の設立登記を行ないます。なお、事業承継日までは個人事業主として活動を行なうことを前提としているため、法人としての事業活動を行なうことはできません。また、社会保険等の資格取得日が事業承継日よりも前にならないことにも注意が必要です。
法人設立後、個人事業主と法人代表者との間で事業譲渡契約を締結します。事業開始予定日は、事業承継日とします。
認可後の許可の有効期間
有効期間は、事業承継の日を含めて、承継の日の翌日から5年間(有効期間は5年と1日に)となります。
たとえば、令和6年4月1日に合併した場合、許可の有効期間は令和6年4月1日~令和11年4月1日となります(次の許可期間は令和11年4月2日から5年間)。
相続の認可
相続による承継の場合は、建設業者である個人事業主の死亡後30日以内に相続の認可を受けることで、空白期間を生じることなく、被相続人の建設業者としての地位の全部を承継することができます。なお、相続の認可の審査においては、相続人が許可要件等を備えていることが必要です。
認可の申請をした場合、処分(認可または不認可)があるまでの間は、相続人は建設業の許可を受けたものとして扱われます。
相続しない場合には廃業届等を提出します。
認可後の許可の有効期間
有効期間は認可日の翌日から5年間です。なお、認可日当日も許可は有効なので、認可通知書記載の有効期間は5年と1日となります。
おわりに
行政書士しょうじ事務所では、建設業許可申請のお手伝いをさせていただいております。建設業の許可取得に関してお困りごとがありましたら、是非ご相談ください。