農業|農地の贈与税納税猶予制度

贈与税とは、個人から財産を無償で譲り受けたときにかかる税金です。農地を贈与すると贈与税が課税されますが、農業後継者の育成等を税制面から支援するために、贈与税の納税を猶予する制度が設けられています。

農業を営んでいる人が、農業のために使用している農地の全部や採草放牧地および準農地の一定部分をその農業を引き継ぐ推定相続人の1人に贈与した場合には、その贈与を受けた農業後継者に課税される贈与税については、その贈与を受けた農地等について受贈者が農業を営んでいる限り、その納税が猶予され、受贈者または贈与者のいずれかが死亡した場合には、その贈与税は免除されます。

贈与者の死亡により贈与税額の免除を受けた場合には、贈与農地等(農地、採草放牧地、準農地)を相続により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。この場合、農業を継続する場合は、相続税納税猶予の適用を受けることができます。

なお、贈与者または受贈者の死亡の日前に、一定の事由が生じた場合には、その納税猶予税額の全部または一部の納税猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければなりません。

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この特例の適用が受けられるのは、次の要件のいずれにも該当する場合に限られます。

贈与の要件

贈与者の農業の用に供している農地等のうち「農地の全部」、「採草放牧地の3分の2以上の面積のもの」及び「準農地の3分の2以上の面積のもの」を、農業後継者(推定相続人の1人)に一括して贈与することが必要です。

「準農地」とは、10年以内に農地又は採草放牧地として農業に供することが適当と市町村長が証明したものです。

贈与者の要件

贈与者の要件としては、贈与の日まで3年以上引き続いて農業を営んでいた個人で、次に掲げる場合に該当しない人であることが必要です。

  • 贈与をした日の属する年(以下「対象年」)の前年以前において、その農業の用に供していた農地を推定相続人に対し贈与している場合であって、その農地が相続時精算課税の適用を受けるものであるとき

    ※過去の年分において、贈与者の推定相続人に農地を贈与し、その推定相続人が相続時精算課税の適用を受けている場合には、その贈与者の全ての推定相続人がこの特例を受けられないことになる。
  • 対象年において、今回の贈与以外に農地等を贈与している場合
  • 過去に農地等の贈与税の納税猶予の特例に係る一括贈与を行っている場合

受贈者(農業後継者)の要件

受贈者の要件としては、贈与者の推定相続人のうちの1人で、次に掲げる要件の全てに該当するものとして農業委員会が証明した個人であることが必要です。

  • 贈与を受けた日において、年齢が18歳以上であること
  • 贈与を受けた日まで引き続き3年以上農業に従事していたこと
  • 贈与を受けた日後、速やかにその農地及び採草放牧地によって農業経営を行うこと
  • 農業委員会の証明の時において、担い手になっていること

    ※担い手とは、①認定農業者、②認定新規就農者、③基本構想水準到達者(効率的かつ安定的な農業経営になっている者)のいずれかの者のこと。

この特例の適用を受けるときには、贈与税の申告書に一定の書類を添付して、贈与税の申告書の提出期間内に提出することが必要です。さらに、納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。

納税猶予期間中の手続

この特例の適用を受けた人は、納税猶予の期限が確定するまでの間、贈与税の申告期限から3年目ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨および農業経営に関する事項を記載した届出書(継続届出書)を提出しなければなりません。

継続届出書の提出がない場合は納税猶予が打ち切られ、納税猶予税額に利子税を加算して納付しなければなりません。

次の事項に該当すると、納税猶予の適用が打ち切られ、猶予税額の全部または一部に利子税を加算して納税しなければなりません。

  • 贈与を受けた農地等について、譲渡等(譲渡、贈与若しくは転用のほか、地上権、永小作権、使用貸借による権利若しくは賃借権の設定又はこれらの権利の消滅若しくは耕作の放棄を含む)があった場合
  • 贈与を受けた農地等に係る農業経営を廃止した場合
  • 受贈者が贈与者の推定相続人に該当しないこととなった場合
  • 継続届出書の提出がなかった場合
  • 担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかった場合
  • 都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合(同法の規定による特定生産緑地の指定の解除があった場合を含む)
  • 特例農地等が都市計画の変更等により特定市街化区域農地等に該当することとなった場合(その変更により「田園住居地域内にある農地」又は「地区計画農地保全条例による制限を受ける区域内にある農地」でなくなり、特定市街化区域農地等に該当することとなった場合を除く)
  • 準農地について、この特例の適用を受けた場合で、申告期限後10年を経過する日までに、農業の用に供されていない準農地がある場合

特例農地等の譲渡または貸付け等をした場合には、上記のとおり納税猶予を受けている贈与税額等を納付しなければなりませんが、一定の要件に該当する場合は納税猶予の適用が継続する例外措置が設けられています。なお、例外措置を受けるためには、税務署への届出等所定の手続が必要です。

例外措置とは、たとえば、次のような場合に該当するときは、納税猶予の適用を継続することができます。

  • 農業経営基盤強化促進法等により担い手に貸し付ける場合(特定貸付け)
  • 身体障害等により営農継続が困難となった場合に貸し付ける場合(営農困難時貸付け)
  • 農地の譲渡から1年以内に、その対価を持って他の農地に買い換える場合(買換特例)など

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