相続|死因贈与とは
死因贈与とは、贈与をする人(贈与者)と贈与をされる人(受贈者)の双方の合意によって締結される贈与契約です。契約の締結自体は、贈与者が存命中に行われますが、死因贈与契約の効力は、贈与者の死亡によって発生します。
なお、契約名称は「贈与」ですが、税法上、死因贈与契約によって贈与された財産等には、贈与税ではなく相続税が課されます。
死因贈与と遺贈の比較
死因贈与と似たものに「遺贈」があります。「遺贈」とは、遺言によって、遺贈者(財産を渡す人)の財産を、受遺者(財産を受ける人)に、譲り渡すことをいいます。
死因贈与と遺贈どちらも、財産を渡す人が死亡することによって効力が生じ、無償で財産を移転できる点では同じですが、次のような点で違いがあります。
合意の要否
死因贈与は、財産を与える側と受け取る側の双方が合意し、契約することで成立します。
これに対して遺贈は、遺言者が遺言によって財産を贈与するという意思表示を一方的にする単独行為であり、受け取る側の承諾は必要ありません。ただし、要らない財産を贈与されても困るので、遺贈の場合、受遺者は財産の受け取りを放棄することが認められています。
書面の要否
死因贈与は「契約」であり、口頭でも契約は成立しますが、贈与者の死後に揉め事が起こらないよう、契約書を作成しておくのが望ましいでしょう。
遺贈の場合は、誰にどの財産を渡すのか「遺言書」に明記しなければなりません。
年齢制限
「契約」は法律行為なので、死因贈与契約を単独で行う場合は成年に達している必要があります。仮に未成年者が死因贈与契約を行う場合は、親権者などの法定代理人の同意が必要になります。
一方、遺贈は「遺言」による贈与なので、15歳以上であれば単独で遺言を作成することができます。
撤回の可否
遺贈の場合、遺言書を作成し直すことで撤回できます。
死因贈与についても、契約ではあるものの、その契約の効果が未だ生じていなければ撤回することは可能です。しかし、贈与を受ける人に自身の生活の面倒をみてもらうなどの義務や負担を条件にしている「負担付死因贈与」の場合には撤回が認められない場合もあります。
これは、受贈者が既に義務や負担を履行している場合は、贈与者はその利益を既に受けており、この状態で贈与者に撤回を認めると、受贈者の受ける不利益が大きいためです。
税制面の違い
相続人が相続によって不動産を取得する場合は、税の軽減措置が適用され、負担が軽減されます。一方、死因贈与によって取得する場合は軽減措置が適用されず、相続の場合に比べて負担が重くなります。
不動産取得税
不動産が死因贈与された場合には、対象となる土地や建物の固定資産税評価額に対し、一律4.0%の不動産取得税が課されます。なお、平成20年4月1日~令和6年3月31日に取得した土地と住宅については、現在、軽減税率として3%が適用されています。
一方、土地や建物が、法定相続人に相続された場合には、不動産取得税はかかりません。
登録免許税
死因贈与によって土地や建物を取得した場合には、遺贈と同様、固定資産税評価額に対し、2.0%の登録免許税が課されます。一方、法定相続人が相続により不動産を取得すれば、固定資産税評価額に対して0.4%の登録免許税で済みます。
仮登記の可否
「仮登記」とは、簡単に言うと登記の予約です。遺贈の場合は仮登記をおこなうことはできませんが、死因贈与契約の場合は仮登記をすることができます。
死因贈与契約を結んだにもかかわらず、他の誰かに対象の不動産を譲ってしまう可能性もあり、所有権移転の登記をされてしまうと、不動産はその人のものになってしまうかもしれません。
このような事態を防ぐために仮登記をしておけば、不動産が第三者の手に渡ることを防ぐことができ、贈与者が亡くなった後には本登記をおこなうことで受贈者の権利を守ることができます。
死因贈与契約書の作成
死因贈与を行う場合、口約束でも契約は成立しますが、贈与者が亡くなった後、死因贈与を主張しても信じてもらえないことも考えられますので、揉め事が起こらないように、死因贈与契約書を作成しておくのが望ましいです。
さらに、紛失や改ざんのリスクがある場合には、死因贈与契約書を作成するだけでなく、それを公正証書にすることをおすすめします。公正証書にしておけば、原本は公証役場で保管してもらえるので、紛失や改ざん等を防げます。
また「執行者」を指定して、死後に手続きをおこなう人を定めておけば、所有権移転登記の手続きをおこなう際にもスムーズに進められるため、執行者の指定も検討するとよいでしょう。
おわりに
行政書士しょうじ事務所では、相続に関するご相談に幅広く対応しております。死因贈与契約書の作成もサポートしておりますので、ご不明な点がありましたら、どうぞご相談ください。