ビザ・在留資格|国籍の基礎知識
国籍とは
国籍とは、国家の構成員であることを示す資格です。各国の国籍法は、血統主義と生地主義の2つに分けることができます。
血統主義
血統主義とは、親がその国の国民である場合に、子どもにも国籍を与えるという考え方です。日本の国籍法には「生まれたとき両親のどちらかが日本人であればその子どもは日本の国籍を有する」と定められており、父母両系血統主義を採用しています。
血統主義をとる国の多くが、昔は、父のみの血統を伝える父系優先血統主義でした。近年は父と母両方の血統を認める父母両系主義の国がほとんどですが、中東などには今でも父系優先血統主義の国があります。
生地主義
生地主義とは、親の国籍にかかわらず、その国で生まれた子どもは、その国の国籍を取得するというものです。
たとえば両親が日本人でも、子どもがアメリカで生まれたら、その子どもは生地主義をとるアメリカの国籍法によってアメリカ国籍を与えられます。しかし同時に、日本の血統主義によって日本国籍も与えられますので、アメリカと日本の2つの国籍をもつことになります。
重国籍
1人の人間が各国の定める国籍法によって、出生時に2つ以上の国の国籍をもつようになったり、国際結婚の結果、配偶者の国の国籍も与えられた状態を重国籍といいます。
日本は基本的に重国籍を認めていないので、出生・婚姻などによって18歳になる前に重国籍となった人は20歳までに、また18歳を過ぎてから重国籍となった人は重国籍となった日から2年以内に、どちらかの国籍を選択することになっています。
ただし、外国国籍の放棄手続きは、当該国で有効な方法で行われるべきものなので、日本国籍を選択したとしても外国国籍を放棄したことにはなりません。
無国籍
無国籍とは、人がいずれの国籍も有していない状態のことをいいます。たとえば、日本人の父と外国人の母との間の非嫡出子が、母の国籍を取得できないような場合に、その子どもは無国籍の状態になります。
国籍の取得原因
日本国籍を取得する原因として、出生、届出、帰化の3つがあります。
出生による国籍取得
出生した子どもは、次の場合には日本国籍を取得します。
- 子どもが生まれたときに、父または母が日本国民である場合
- 子どもが生まれる前に死亡した父が日本国民である場合
- 日本で生まれた子どもの父母がともに知れない場合
- 日本で生まれた子どもの父母がともに無国籍者である場合
法務大臣への届出による国籍取得
法務大臣に次の届出をすることにより、届出の日から国籍取得・再取得の効力が生じます。
- 認知された子の届出
- 国籍不留保者の届出
- 官報催告を受けた国籍不選択者の届出
届出によって日本国籍を取得したあとは、国籍を取得した者が、国籍取得の日から1ヶ月以内(国外にいる場合は3ヶ月以内)に、「国籍取得の届出」をすることで、戸籍がつくられることになります。
①認知された子の届出による国籍取得
出生時には日本国民との法律上の実親子関係が存在していなかったが、出生後、日本国民からの認知によって親子関係が生じた場合、その認知を受けた子は、法務大臣に対する届出によって日本国籍を取得することができます。この場合において、父と母が婚姻しているかどうかは、子どもの国籍取得の要件とされていません。
認知により国籍を取得しようとする子が、法務大臣への届出のときに15歳未満の場合は法定代理人が、15歳以上であるときは本人が届出を行います。
認知された子の届出による国籍取得の要件
- 父または母が認知したこと
- 日本国民である母とその非嫡出子との実親子関係は、原則として分娩の事実により当然に発生すると解されているため、適用対象となるのは、日本国民である父が出生後に認知した子に限られます。
- 子どもが18歳未満であること
- 法務大臣に対する届出の時点で、この要件を満たす必要があります。
- 認知をした父が、子どもの出生時に日本国民であったこと
- 認知をした父が現に日本国民であること、または、その死亡のときに日本国民であったこと
- 現に日本国民であることは、法務大臣に対する届出の時点で日本国民であることを意味します。認知の当時において、日本国民であったことまでは求められていません。
- 子どもがかつて日本国民であった者でないこと
- なお、日本国民である母の嫡出子でない子どもが、出生により日本国籍を取得した後、国籍喪失原因に該当して日本国籍を喪失している場合に、日本国民である父から認知されたときは、法務大臣への届出による日本国籍の取得の適用対象とはなりません。
②国籍不留保者の届出による国籍の再取得
国籍不留保者とは、出生により外国の国籍を取得した日本国民のうち、日本国外で出生した者であって、原則として出生の日から3ヶ月以内に、戸籍法に定める日本国籍留保の届出をしなかったために、出生のときに遡って日本国籍を喪失した者のことをいいます。
国籍不留保者の国籍再取得の要件
- 国籍不留保により日本国籍を喪失したこと
- 国籍再取得の届出のときに18歳未満であること
- 日本に住所を有すること
③官報催告を受けた国籍不選択者の届出による国籍再取得
法務大臣は、重国籍者が国籍選択制度によって国籍選択をしない場合、書面により国籍選択の催告をすることができます。このとき、催告の文書を受けるべき者の所在を知ることができないとき、その他書面によってすることができないやむを得ない事情があるときは、催告すべき事項を官報に掲載してすることができます。
催告を受けた日から1ヶ月以内に日本の国籍を選択しないときは、その期間が経過したときに日本国籍を失いますが、官報による催告を受けた者については、自らはその事実を知らないまま日本国籍を失っている可能性があるので、適正手続き保証の観点から、国籍再取得の制度が設けられています。
国籍不選択者の国籍再取得の要件
- 官報掲載による催告を受け、期限までに日本国籍を選択しなかったことにより、日本国籍を喪失したこと
- 届出のときに無国籍者であるか、重国籍者については、日本国籍取得により、当然に外国籍を喪失すること
- 日本国籍を失ったことを知ったときから1年以内の届出であること
- 本人が自己の日本国籍喪失を現に知った日から起算する
- 天災その他、国籍を取得しようとする者の責めに帰することができない事由によって、その期限内に届出ることができないときは、届出が可能となったときから1ヶ月以内に法務大臣に届出をおこなう必要がある。
帰化による国籍取得
帰化とは、日本国民でない者が本人の志望に基づいて申請し、法務大臣の許可により日本国籍を取得することをいいます。法務大臣が帰化を許可した場合には、官報にその旨が告示され、その告示の日から帰化の効力を生じることとなります。
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国際結婚と国籍
日本の国籍法は、婚姻による国籍の取得も喪失も認めていないので、国際結婚によって2人の国籍が変わることは原則的にありません。しかし、次のように、婚姻を理由に外国籍を取得または喪失する場合があります。
相手の国の国籍が与えられる場合
イランなど一部のイスラム教国などでは、本国法によってその国の男性と結婚した外国人女性は、本人の意思にかかわらず国籍を与えられることがあります。
日本法は重国籍を認めていませんが、婚姻によって外国籍が自動的に与えられて重国籍になった場合は、基本的に日本国籍を喪失することはありません。また、与えられた国籍を拒否できる国もあります。
結婚相手の国籍を自らの意思で取得する場合
国によっては比較的簡単な届出で自国民の外国人配偶者に国籍を与えています。しかしこの場合、本人の意思で外国の国籍を取得しているので、その行為により日本国籍を失うことになります(国籍法第11条)。
日本国籍を失った日本人は、国籍離脱届を提出することになります。
帰化して配偶者の国籍を取得する場合
帰化を申請し、国家の許可を得て配偶者の国籍を取得できる場合があります。日本も含めてほとんどの国がこの制度を採用しています。
ただし、日本人が外国に帰化するということは、自分で希望して外国の国籍を取得しているので、日本国籍を放棄したことになり、日本に国籍離脱届を提出することになります。
国籍留保制度
国籍留保制度とは、外国で生まれて出生と同時に二重国籍になった子どもについて、父母など法定代理人が在外日本公館に出生届を出す際に同時に日本国籍を留保する意思表示をするもので、生後3ヶ月以内にこれをしないと出生日にさかのぼって日本国籍を失うことになります。
実際の手続きとしては、出生届の用紙の「その他」の欄に「日本国籍を留保する」と印刷してあるので、そこに署名捺印するだけです。
国籍選択制度
18歳未満で二重国籍になった場合は20歳までに、18歳を過ぎて二重国籍になった場合は2年以内に、どちらの国籍を選択するか、「国籍選択届」という書式を用いて、役所に届け出ることになります。15歳未満の場合は両親や法定代理人が届出をし、15歳以上の場合は本人が記入・捺印して提出することになっています。
国籍選択届を提出することで、国籍選択宣言をした日付とその事実が戸籍に記載されます。
期限内に国籍を選択しない場合、法務大臣名で本人宛に国籍を選択するように書面で催告されます。この催告に応じず、選択届を出さないまま1ヶ月が経つと、日本国籍を喪失するしくみになっています。
おわりに
行政書士しょうじ事務所では、外国人の方が日本に入国、在留するために必要な各種の査証(ビザ)・在留資格取得(新規/更新)のためのサポートをおこなっております。
査証・在留資格の取得手続きについてお困りごとがありましたら、ぜひご相談ください。