法人設立|令和元年の会社法改正による変更点

会社法の一部を改正する法律が令和元年12月11日に交付され、改正内容の大部分は令和3年3月1日から施行、株主総会資料の電子提供制度の創設および会社の支店の所在地における登記の廃止については令和4年9月1日から施行されています。

株主総会に関しては、次の事項の見直しが行なわれました。

  • 株主総会資料の電子提供制度の創設
  • 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備

株主総会資料の電子提供制度の創設

株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、ウェブサイトのアドレス等を書面で株主に通知をすることによって、株主総会資料を提供することができる制度が新たに設けられました。

ウェブサイトへの掲載を開始する日は、株主総会の日の3週間前の日または招集の通知を発した日のいずれか早い日とされています。

上場会社等の振替株式を発行する会社においては、電子提供制度を利用しなければならないこととされており、令和5年3月1日以降に開催される株主総会から、株主総会資料の電子提供制度が利用されることになります。

この制度の創設により、株式会社は、印刷や郵送のために要する時間や費用を削減することができ、株主に対しては従来よりも早期に充実した内容の株主総会資料を提供することができるようになることが期待されています。

振替株式を発行しない非上場会社においては、令和4年9月1日以降、定款変更により、株主総会資料の電子提供制度を利用することができます。

なお、株主総会資料を従来のように書面で受け取りたい場合は、令和4年9月1日以降、書面交付請求を行なうことが必要です。

株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備

1人の株主が膨大な数の議案を提案するなど、株主提案権の濫用的な行使事例が発生していたため、株主が同一の株主総会において提出することができる議案の数を10までとする上限が新たに設けられました。

取締役等に関しては、次の事項の見直しが行なわれました。

  • 取締役の報酬に関する規律の見直し
  • 会社補償に関する規律の整備
  • 役員等賠償責任保険契約に関する規律の整備
  • 業務執行の社外取締役への委託
  • 社外取締役を置くことの義務付け

取締役の報酬に関する規律の見直し

取締役の個人別の報酬の内容は、取締役会または代表取締役が決定していることが多く、報酬は取締役に適切な職務執行のインセンティブを付与する手段となり得るものであるため、取締役の報酬等の内容の決定手続き等に関する透明性を向上させるとともに、株式会社が業績等に連動した報酬等を適正かつ円滑に取締役に付与することができるよう、次のように改正されました。

  • 上場会社等の取締役会は、定款の定めや株主総会の決議により取締役の個人別の報酬等の内容が具体的に定められない場合には、その内容についての決定方針を定めなければならない。
  • 取締役の報酬等として株式会社の株式または新株予約権を付与しようとする場合には、定款または株主総会の決議により、株式または新株予約権の数の上限等を定めなければならない。
  • 上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払い込み等を要しない。

会社補償に関する規律の整備

会社補償が適切に運用されるように、補償契約を締結するための手続きや補償をすることができる範囲等を明確にするなど、会社補償に関する規定が新たに設けられました。

役員等賠償責任保険契約に関する規律の整備

いわゆる会社役員賠償責任保険(D&O保険)が適切に運用されるように、契約の締結に必要な手続き等を明確にするなど、役員等のために締結される保険契約に関する規定が新たに設けられました。

業務執行の社外取締役への委託

株式会社と取締役の利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、その都度、取締役会の決議によって、株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができることとし、委託された業務の執行をしても社外取締役の資格を失わないこととされました。

社外取締役を置くことの義務付け

日本の資本市場が全体として信頼される環境を整備するため、上場会社等については、社外取締役を置くことが義務となりました。

社債の管理について、法改正前は、社債管理者制度がありましたが、権限が広く、責任が重いことを原因として、なり手の確保が難しく、利用コストも高くなることが指摘されていました。

これを、社債権者自らが社債を管理することができる場合を対象として、社債管理補助者(銀行、信託会社、弁護士、弁護士法人など)に社債の管理の補助(倒産手続きにおける債権届出、情報伝達など)を委託することができる制度が新設されました。

法改正前は、自社の株式を対価として、他の会社を子会社とする手段として株式交換の制度がありましたが、完全子会社とする場合でなければ利用できませんでした。また、自社の新株発行等と他の会社の株式の現物出資という構成をとる場合には、手続きが煩雑でコストがかかるという指摘がありました。

改正法では、企業買収に関する手続の合理化を図るため、完全子会社とすることを予定していない場合であっても、株式会社が他の株式会社を子会社とするために、自社の株式を他の株式会社の株主に交付することができる制度が新設されました。

インターネットが広く普及した現在において、会社の支店の所在地の登記所から本店所在地等を検索するための仕組みを維持する必要が無くなり、登記申請義務を負う会社の負担軽減等の観点から、令和4年9月1日以降、会社の支店の所在地における登記は不要となりました。

上記の他に、次の事項についても見直しが行なわれました。

  • 社債権者集会の決議による元利金の減免に関する規定の明文化
  • 議決行使書面の閲覧謄写請求の拒絶事由の明文化
  • 成年被後見人等についての取締役の欠格条項の削除およびこれに伴う規律の整備

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