法人設立|株式会社の定款

株式会社を設立するためには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません。定款とは株式会社の基本事項を定めるものです。定款の記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項および任意的記載事項の3種類があります。

定款に必ず記載しなければならない事項を絶対的記載事項といい、会社法には次の項目が定められています。どれか1つでも欠けていたり、内容が違法だったりすると、定款自体が無効になり、会社の設立自体が無効になります。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  • 発起人の氏名又は名称及び住所
  • 発行可能株式総数

目的

目的とは、株式会社が営もうとする事業のことです。

商号

商号とは、会社の名称です。株式会社をつくるのであれば「株式会社」という文字を入れなければなりません。使用できる文字や記号にはルールがありますので注意が必要です。

本店の所在地

本店とは、主たる営業所のことです。所在地は、所在場所とは異なり、最小独立の行政区画をいいます。

定款に地番まで記載するかどうかは任意ですが、将来的に本店を移転する可能性もあります。定款に記載している行政区画内で本店を移転する場合は、定款を変更する必要がありません。

設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

会社を設立するにあたり、確定している出資額または最低額を記載します。実際に出資された額の範囲内で資本金額を決めますが、その半分以上は資本金にしなければならず、残額は資本準備金にすることができます。

発起人の氏名又は名称及び住所

発起人になることができるのは、個人または法人です。発起人の人数は1人でもよく上限はありませんが、設立後には株主となる人なので、各発起人は設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません。

発行可能株式総数

発行可能株式総数は、公証人による定款認証のときまでに定めていなくてもよく、その場合は設立の登記までに、発起人全員の同意によりまたは創立総会の決議により、定款を変更して、発行可能株式総数の定めを記載しなければなりません。

会社が設立するときに実際に発行する株式数は、公開会社であれば、発行可能株式総数の4分の1以上を発行しなければなりません。

相対的記載事項とは、定款に記載していなくても定款自体の効力には影響しないもので、定款に記載することによって初めて有効となる事項のことです。

相対的記載事項のなかでも、会社法第28条に定められている次の4つの変態設立事項が重要です。

  • 現物出資
  • 財産引受
  • 発起人の報酬・特別の利益
  • 設立費用

上記の事項を定款に記載させる理由は、不必要な出費や過大な出費をすることによって、設立された会社の財産が不当に減少することを防止するためです。

変態設立事項を定款に記載すると、裁判所が選任する検査役による調査が必要になるため、発起人は、公証人の定款認証のあと遅滞なく、裁判所に対して検査役の選任の申立てをしなければなりません。選任された検査役に支払う報酬は、成立後の会社が負担することになり、その報酬額は裁判所が決定します。

ただし、次の場合には検査役の調査は不要となります。

  • 現物出資及び財産引受にかかる財産の総額が500万円以下の場合
  • 市場価格のある有価証券について定款に記載された価額が市場価格を超えない場合
  • 現物出資財産等について定款に記載された価額が相当であることについて、弁護士、公認会計士、税理士等の証明(現物出資財産等が不動産である場合には、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合

現物出資

現物出資とは、不動産など、金銭以外の譲渡可能な財産をもって出資することをいいます。現物出資の場合は、評価額の点で濫用の危険が大きいので、発起人としての責任を負わせることが適当であることから、設立時発行株式についての現物出資者は発起人のみに限られます。

定款には、出資者の氏名・名称、出資の目的財産、その価額、これに対して与える株式の種類・数を定めなければなりません。

財産引受

財産引受とは、発起人が設立中の会社のために、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約のことをいいます。

定款には、譲渡人の氏名・名称、譲渡の目的財産、その価額を定めなければなりません。

発起人の報酬・特別の利益

発起人の報酬とは、発起人の設立の労務に対して一時的に支払われる金銭のことをいいます。発起人の報酬は本来、設立費用の一部ですが、発起人自身がその額を恣意的に決定する危険が大きいため、設立費用と区別して定款に定めなければならないものとされています。

特別の利益とは、利益配当や新株引受権に関する優先権や会社の設備利用権など、設立の功労者として発起人が受ける権利のことをいいます。

設立費用

設立費用とは、発起人が会社の設立のために支出した費用のことをいいます。たとえば、創立事務所の賃借料、株式の募集広告費、創立総会の招集費用などが設立費用に該当します。

定款で定め、検査役の調査を通った範囲内で、会社に対して求償することができます。

以上のほか、変態設立事項以外の相対的記載事項および任意的記載事項を定款に記載することができます。

変態設立事項以外の相対的記載事項

変態設立事項以外の相対的記載事項として、次のような事項を定款に記載することができます。

  • 株式の譲渡制限
  • 取締役会、監査役等を置くことができる旨
  • 存続期間又は解散の事由
  • 公告方法 など

任意的記載事項

任意的記載事項とは、定款の記載事項のうち、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で会社法の規定に違反しないものをいい、次のような事項を定款に記載することができます。

  • 定時株主総会の招集時期
  • 株主総会の議長
  • 取締役や監査役の員数
  • 事業年度 など

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