遺言書|遺言を撤回する方法

遺言書を作成したあとで、家族との仲が悪くなるなど、相続人との関係性に変化が生じ、遺言の内容を変更したいということもあります。既に作成した遺言書はどのように撤回すればよいのか、遺言の撤回方法についてお伝えします。

遺言者は、生存中であれば、いつでも自由に、遺言の方式に従って、遺言の一部または全部を撤回することができます(民法第1022条)。そして、この遺言を撤回する権利を遺言者は放棄することはできません(民法第1026条)。

遺言を撤回するときは、「遺言の方式に従って」行う必要があります。つまり、民法第967条以下に定める遺言書を作成する方法に従って、新たに「前の遺言を取り消す」という遺言をすることによって、撤回することができます。

撤回するために新たに作成する遺言の方式に制限はなく、自筆証書、公正証書、秘密証書のいずれの方式でも、前の遺言を撤回することができます。たとえば、公正証書で作成した遺言を、自筆証書遺言で撤回することもできます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言を撤回するためには、自筆証書遺言の方式に従い、「○○年○○月○○日付自筆証書遺言を撤回する」ことを明記した部分を含む全文と、日付、署名を自書して印を押した書面を作成することになります。

なお、自筆証書遺言については、部分的に加除を行うなどの変更をすることもできます。その場合には、変更したい箇所に加筆または削除を行い、変更した箇所に押印する必要があります。その上で、変更したところの欄外や遺言書末尾に、「○○頁○○行目○○字削除○○字加筆」などと記載して、署名することが必要です。

公正証書遺言

公正証書遺言を撤回するためには、公正証書遺言の方式に従って、作成した公正証書遺言を撤回することが可能なのはもちろんですが、自筆証書遺言あるいは秘密証書遺言の方式により撤回することも可能です。

なお、公正証書遺言については、すでに作成された公正証書を変更する手続はないため、内容を変えたいときには、作成した公証役場に連絡して、新たに公正証書遺言書を作り直す必要があります。

撤回するための遺言書を新たに作成しなくても、次の場合には、遺言が撤回される場合があります。

前の遺言と後の遺言の内容が抵触する場合

新たに遺言を作成し、その中で、前に遺言した内容と抵触する内容の遺言をした場合、抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条第1項)。

たとえば、「長女にすべて相続させる」という内容の遺言を、後日気が変わって「次女にすべて相続させる」という遺言をした場合、それが遺言者の自由意志に基づくものであれば、前の遺言は撤回されたことになります。

また、たとえば、「長女にA銀行のすべての預金を相続させる」という遺言について、後日、「次女にA銀行の預金のうち、定期預金を相続させる」という遺言をした場合、「長女にA銀行の定期預金を相続させる」という部分が撤回されたことになります。

遺言の内容と生前処分が抵触する場合

遺言と抵触する生前処分が遺言後になされた場合にも遺言は撤回されたとみなされます(民法第1023条第2項)。

たとえば、「A不動産を長女に相続させる」と遺言をしたのに、後日、A不動産を遺言者が売却してしまうような場合です。この生前処分により、「A不動産を長女に相続させる」という遺言は撤回されたものとみなされます。

遺言者が故意に遺言書を破棄した場合

遺言者が故意に遺言書を破棄した場合は、破棄した部分について、遺言が撤回されたものとみなされます(民法第1024条)。

「破棄」とは、遺言を破り捨てたり、焼却したりと遺言書を物理的に損傷する場合だけでなく、遺言書の文面を抹消して判読不能にしたり、遺言の日付を判読不能にすることにより遺言がいつ成立したのかを不明にする行為も含みます。

遺言書の全部を破棄したときには、全部を撤回したものとみなされるので、撤回したという内容の遺言書を新たに作成する必要はありません。しかし、遺言書を相続人の誰かに預けているような場合に、返してくれといっても返してくれないようなときには、遺言書を破棄することができないので、この場合には、前の遺言を撤回するという遺言を新たに作成しなければなりません。

自筆証書遺言

自筆証書遺言の場合、遺言書を確実に廃棄すれば完了です。シュレッダーにかけたり、燃やすなどして完全に復元できないようにします。

また、令和2年7月10日より開始された遺言書保管制度を利用する場合は、遺言者は遺言書が保管されている法務局に対して、遺言者本人が自ら法務局に出頭することにより、いつでもその保管の撤回を申し出ることができます。保管の撤回を申し出ると、法務局から遺言書が遺言者本人に返還されますので、返還されたら、その遺言書を確実に廃棄します。

公正証書遺言

公正証書遺言の場合は、遺言書の原本は公証役場で保管されているので、遺言者が持っている正本を破棄しても遺言を撤回したことにはなりません。正本は原本の謄本なので、必要があれば何通でも交付を受けることができるものだからです。

公正証書遺言を撤回するためには、新しい遺言を作成して撤回する必要があります。

遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合

遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合、破棄した部分について、遺言が撤回されたとみなされます(民法第1024条)。たとえば、「A不動産を妻に相続させる」という内容の遺言をしていたのに、A不動産を遺言者が取り壊したような場合です。

作成した遺言はいつでも撤回することができます。しかし、手続きを間違うと撤回が無効になるリスクもあります。

行政書士しょうじ事務所では、遺言者の希望を実現するために、遺言の正しい撤回方法や手続はもちろん、遺言書の作成に関して幅広いご相談に対応しておりますので、ご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。