成年後見人等の事務報告

成年後見人等は、就任時の初回報告、定期報告(少なくとも年に1回)、後見事務の終了報告が義務づけられています。

このほかにも、家庭裁判所から報告を求められた場合や、遺産分割や財産の処分などで本人の財産環境が大きく変わるときや、本人の入院先や住所等に変更があったときは、家庭裁判所に確認の上、適宜報告を行なうことが必要です。

「成年後見人等に就任したとき」とは、審判による場合は審判が確定した日、任意後見契約による場合は契約の発効日のことです。この就任した日を起算日として、おおよそ1ヶ月以内に提出すべき最初の報告が初回報告です。初回報告で提出すべき書類として、主に次のものがあります。

事務報告書

事務報告書に記載すべき内容は大きく2つに分けられます。

1つ目は財産関係で、別途作成する財産目録の内容と申立時に作成された財産目録の内容を比較して、その異同を記載します。

2つ目は身上監護に関する内容ですが、これは申立時から事務報告書提出までの期間における本人の住所の変更の有無や申立てのきっかけとなった課題の処理状況、そして今後の本人の身上監護に関するプランなどを記載するものです。

財産目録

本人の財産の状況を改めて確認する意味で、審判の確定後、登記事項証明書(若しくは審判決定書及び確定証明書のセット)をもって、申立時の財産目録を参考にしながら、改めて財産調査を行ない、その結果を所定の様式にまとめ、財産目録を作成します。

成年後見人等に就任した後の調査で新たな財産の存在が判明することもあります。その場合は、財産目録とは別に、前項の事務報告書にも記載します。

不動産の調査

本人が不動産を所有している場合は、不動産を特定し、評価額や固定資産税の支払い額を確認します。本人宛に届いている固定資産税の納税通知書、登記済権利証、購入当時の売買契約書などから、不動産の地番や家屋番号を調べます。さらに「名寄帳」を閲覧すれば、同一市町村内に所有している不動産の一覧を確認することができます。

所有している不動産を特定したら、本人の資産を算出するために、土地や建物の固定資産税評価証明書を取得して、不動産の評価額を調べます。また、年間の収支を把握するために、納税通知書の記載から固定資産税の支払い額を確認します。

預貯金・有価証券・保険の調査

金融機関で本人の取引状況を調査します。調査を行なう際には、それぞれの調査と併せて、各金融機関に「成年後見制度に関する届出書」を提出して、後見人として就任したことを届け出ます。

預貯金については、通帳・銀行印を本人から預って記帳し、各金融機関の残高を確認します。

株式などの有価証券その他金融商品を所有している場合は、証券会社に問い合わせをして残高証明を取り寄せます。証券会社を経由していない場合は、株式を発行している会社などに直接確認します。

保険については、郵便物や保険証券など、生命保険等に加入している形跡がある場合は、保険会社に問い合わせを行ない、契約内容を確認します。年間の収支を把握するために、保険料の確認が必要です。

その他の財産・借金の調査

上記の財産以外にも、資産的な価値があると思われるものについては調査をしておきます。たとえば、自動車、バイク、時計、宝石、貴金属、絵画などの美術品、骨董品などです。

また、本人に借入などの負債があるかどうかも調査します。住宅ローン、車のローン、カードローンなどです。請求書や郵便物、過去の通帳の履歴などを確認して、借入先を調べ、負債の残高がいくら残っているのか調査します。

収支予定表

本人に関する毎年の収入と支出を大まかに把握して、年間の予算を決めるために作成するのが収支予定表です。

申立時の収支予定表を参考にしながら、就任以降にケアマネージャー、ケースワーカー等から得られた情報に基づいて、本人の日常生活に係る収支をシミュレーションします。

そして、前項の財産目録と付き合わせて、支出の原資が十分かどうかを確認し、調整を繰り返しながら最終的な収支のバランスをイメージして、所定の様式に記載します。

定期報告は、上記の初回報告書の提出後に少なくとも年1回の頻度で、成年後見人等が本人のために適切に業務を行なっているかどうかをチェックするために必要な報告です。報告する内容は、本人の生活状況、財産状況、収支の変動、今後の見通しなどです。

定期報告で提出すべき書類として、主に次のようなものがあります。

事務報告書

初回報告のときとは異なり、基本的に成年後見人等自身の活動の報告となりますが、領収証や預貯金の取引履歴等の記載と齟齬が無いように客観的な事実を明確に記載することが必要です。

財産関係については、老齢年金のみの収入であったところに配偶者の死亡により遺族年金の受給が開始されたなど収支構造に基本的な変更が生じたような場合や、臨時に多額の収入や支出があるような場合などは、時期・原因・金額等について書証を付けて説明することが重要です。

身上監護については、本人の氏名・住所・居所等に変更があった場合や健康・生活の状況に変化があった場合にそれらの事実を記載します。その際、成年後見人等において代理権または同意権(取消権)を行使した場合はその旨を併せて報告することになります。

財産目録

初回報告以降に生じた財産変動の結果(継続調査の結果、新たに判明した財産がある場合を含む、変動がない場合はその旨)を、現金出納帳、預貯金通帳、各種契約書、取引履歴説明書等の記載と齟齬が生じないように作成します。

収支予定表

事務報告書において、収支構造に基本的な変更が生じたと報告された場合や、その他家庭裁判所や監督人において必要があると認める場合に、新たな収支予定表の作成を求められることがあります。

説明資料等

事務報告書、収支予定表以外にも、見守り活動、財産調査、親族・関係機関への連絡等、成年後見人等が行なった事務に関する報告をあげるような場合において、日報等任意の書式を添付することがあります。

報酬付与申立書

成年後見人等としての事務に対する報酬を請求するかどうかは成年後見人等の自由です。請求する場合は、家庭裁判所に対して報酬付与の申立てを行ないます。なお、申立てに必要な費用は、申立人の負担となります。

終了報告は、本人の死亡等により後見等事務が終了すべき事由が発生した場合、発生日から2ヶ月以内に、終了の事由・その発生日・最終的な財産の状況やその他資料を添付して報告することです。

終了報告をもって成年後見人等の行なうべき後見等事務は終了しますが、現実的には、本人の財産が残存する場合、これを本人または本人の相続人等の承継人に引き継ぐまで継続することになります。

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