ビザ・在留資格|外国人の納税
日本の税法においては、国籍と納税義務は関係ありません。外国人であっても、一定の要件にあてはまる場合には、税金を納める必要があります。
たとえば、日本国内で働いて得た収入がある場合は所得税、1月1日現在で日本に住所がある場合は住民税を納めなければなりません。
所得税
所得税は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた個人の所得にかかる税金です。
所得には一般に、働いて得た収入、銀行の利子や企業からの配当金、所有する不動産の賃貸収入や売却益などがあります。これらのうち、日本国内で発生した所得を国内源泉所得と呼び、国外で得た国外源泉所得と区別したうえで、日本での居住形態によって課税されるかどうかが決まります。
所得税の納税義務者と課税対象
所得税の納税義務者と課税対象は、居住の形態区分によって異なります。居住の形態区分には、「居住者」「非永住者」「非居住者」の3つがあります。
- 居住者…日本国内に「住所」がある人または現在まで引き続き1年以上「居所」がある人(非永住者を除く)
- 非永住者…「居住者」のうち、日本の国籍がなく、かつ、過去10年以内において国内に住所または居所があった期間の合計が5年以下である人
- 非居住者…「居住者」「非永住者」以外の人
そして、居住の形態区分ごとに、課税対象となる所得の範囲は次のように定められています。表中の○印は、「課税対象」という意味です。
居住の形態 | 国内源泉の所得で国内で支払われたもの | 国内源泉の所得で国外で支払われたもの | 国外源泉の所得で国内で支払われたもの | 国外源泉の所得で国外で支払われたもの |
---|---|---|---|---|
居住者 | ○ | ○ | ○ | ○ |
非永住者 | ○ | ○ | ○ | 非課税 |
非居住者 | ○ | ○ | 非課税 | 非課税 |
「居住者」となる場合は、どこで支払いを受け取っても、すべて日本で課税対象となります。
「非永住者」となる場合は、国外源泉所得をどこで支払ってもらったかによって、日本の課税対象になるかどうかが決まってきます。たとえば、日本に2年居住しているデザイナーがフランスで1ヶ月働き、その報酬をフランスの会社からフランスの口座に振り込んでもらい、日本へ持ってこない場合には、日本では非課税になります。
「非居住者」となる場合は、支払いの場所は関係なく、国内で発生した所得か否かのみで課税対象となるかどうかが決まってきます。
「住所」と「居所」の違い
「住所」とは、個人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになっています。
一方、「居所」とは、「その人の生活の本拠という程度には至らないものの、その人が現実に居住している場所」とされています。
日本から出国する場合
日本に住所および居所がなくなる場合は、原則として、出国前にその年の給与について年末調整を受けることになります。また、確定申告が必要となる場合には、出国前に確定申告および納税を行う必要があります。
出国した後で、確定申告や納税などの手続きを行う必要がある場合は、日本国内に居住する納税管理人を選び、「納税管理人の届出書」を管轄の税務署に提出する必要があります。出国後は、その納税管理人が本人に代わって手続きを行うことになります。
租税条約
租税条約とは、多国間で活動している個人や法人の二重課税を防止するために、どこの国が最終的に課税をおこなうのかの判定方法を定めているものです。
日本が締結している租税条約の一例として、個人については、①恒久的住居の場所、②利害関係の中心がある場所、③常用の住居の場所、④国籍の順で判定し、どちらの国の「居住者」となるかを決めます。
法人については、本店または主たる事務所の所在地、事業の実質的な管理の場所、設立された場所その他関連するすべての要因を考慮して両締約国の権限ある当局の合意により決定する場合もあります。
税法は国によってさまざまで、日本との租税条約の内容も相手国によって異なりますので、国税局に相談するようにしましょう。
住民税
住民税とは、1月1日現在で住所がある(あった)都道府県と市区町村に納める税金のことです。1月1日時点で日本に住所があり、一定額以上の給料などをもらっている人であれば、外国人の方でも住んでいる市区町村に支払う必要がある税金です。
1月2日以降に日本から出国した場合でも、住民税を納める必要があります。日本から出国するまでに住民税を納めることができない場合は、出国する前に、日本に住んでいる人の中から、自分の代わりに税金の手続きを行う人(納税管理人)を定めて、住んでいる市区町村に届出る必要があります。
納税管理人に指定できる人の範囲や提出する書類などは、市区町村によって扱いが異なるので、住んでいる市区町村に確認しましょう。
おわりに
行政書士しょうじ事務所では、外国人の方が日本に入国、在留するために必要な各種の査証(ビザ)・在留資格取得(新規/更新)のためのサポートをおこなっております。
査証・在留資格の取得手続きについてお困りごとがありましたら、ぜひご相談ください。