日常生活自立支援事業と成年後見制度

日常生活自立支援事業は、成年後見制度を補完するためのものとして、平成11年に社会福祉協議会を実施主体として開始された制度です。

認知症などの判断能力が不十分な方が、地域において自立した生活が送れるように、利用者との契約に基づいて、福祉サービスの利用援助等が行なわれます。

ホームヘルプサービスや配食サービスといった福祉サービスの利用、その他日常生活上のさまざまな契約をするときに自分ひとりで判断することに不安がある、預金の出し入れや日常生活に必要な公共料金などの支払い方がわからない、といったことでお困りの場合は、お住まいの地域にある社会福祉協議会に相談されるとよいでしょう。

この制度の対象者は、たとえば、認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者など判断能力が不十分で、この事業の契約内容を一定程度理解ができる方が対象です。なお、認知症などの病気の診断や、障害者手帳をもっている方に限られるものではありません。

本人と社会福祉協議会との契約に基づいて、福祉サービスを利用する際のさまざまな手続きや契約、預金の出し入れ、生活に必要な利用料などの支払い手続き、年金や預金通帳などの大切な書類の管理などの支援を受けることができます。

福祉サービスの利用援助

次のような福祉サービスの情報提供や手続きの方法・利用についての助言などを受けることができます。これにより、福祉サービスを安心して利用することができます。

  • 福祉サービスの利用における申し込み、契約の代行、代理
  • 福祉サービスについての苦情解決制度の利用手続きの支援
  • 住宅改造、居住家屋の賃借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続きに関する援助、その他福祉サービスの適切な利用のために必要な一連の援助
  • 福祉サービスの利用料を支払う手続きの支援

日常的金銭管理サービス

次のような預金の出し入れや公共料金など日常生活で必要な利用料の支払い手続きなどを代行してもらうことができます。

  • 年金及び福祉手当の受領に必要な手続き
  • 福祉サービスの利用料金の支払い代行
  • 病院への医療費を支払う手続き
  • 税金や社会保険料、公共料金を支払う手続き
  • 日用品等の代金を支払う手続き
  • 上記の支払いに伴う預金の払い戻し、解約、預け入れなどの手続き

書類等の預かりサービス

自分で保管するには不安がある通帳や証書などの大切な書類を保管してもらうことができます。保管してもらうことができる書類等には次のようなものがあります。

  • 年金証書
  • 預貯金の通帳
  • 権利証
  • 契約書類
  • 保険証書
  • 実印・銀行印 など

サービスを利用する手続きの流れは次のようになります。

社会福祉協議会への連絡・相談

まずは、お住まいの地域にある社会福祉協議会に連絡します。そのあと、社会協福祉議会で働いている専門的な知識をもった担当者(専門員)と相談・打ち合わせを行なうことになります。

支援計画の作成

専門員の方が、本人の意向を確認しながら、具体的な支援の内容・実施頻度等を考え、「支援計画」を作成します。これと同時に、本人が契約内容を理解できるかどうかの確認も行なわれます。

契約・支援開始

契約内容に間違いがなければ、本人と社会福祉協議会の間で契約を結びます。契約後は、支援計画に沿って担当者(生活支援員)が定期的に訪問し、支援を開始します。

利用にかかる費用

相談や支援計画の作成に係る費用は無料となっています。

契約後の生活支援員による福祉サービス利用手続きや金銭管理などの支援は有料となっており、支援内容によって金額は異なります。

日常生活自立支援事業と成年後見制度はどちらも、判断能力が衰えた方を支援するための制度です。どのような点が異なるのか下表で比較してみましょう。

日常生活自立支援事業成年後見制度(法定後見)
対象者判断能力が一定程度はあるが十分ではないことにより、自己の能力で様々なサービスを適切に利用することが困難な方判断能力が不十分な方(被補助人、被保佐人、被後見人)
利用手続本人と社会福祉協議会との契約
※契約の意味、内容を理解できることが必要
家庭裁判所の審判
意思能力の確認・審査や鑑定・診断「契約締結判定ガイドライン」により確認
困難な場合は、契約締結審査会で審査
医師の鑑定書・診断書を家庭裁判所に提出
支援(保護)の方法本人と社会福祉協議会による支援内容の決定家庭裁判所による支援(保護)内容の決定
支援(保護)の種類1.福祉サービスの情報提供、助言など相談
(1)福祉サービスの利用契約手続き支援

2.日常的金銭管理
(1)日常的金銭管理に伴う預貯金通帳の払出し等の代理、代行
(2)福祉サービス利用料支払の便宜の供与

3.書類等の預かり
(1)証書等の保管により、紛失を防ぎ、福祉サービスの円滑な利用を支える
1.財産管理・身上監護に関する法律行為
(1)財産管理処分、遺産分割協議、介護保険サービス契約、身上監護等に関する法律行為
(2)代理や取消(後見人等の権限によって決まる)
終了時期本人の意思でサービスを終了できる本人の判断能力の回復が無い限り、本人が亡くなるまで制度を活用することになる
費用・社会福祉事業として、契約締結までの相談などの費用は無料
・契約後の支援は利用者負担
全て本人の財産から支払われる