遺言書|遺言書でできること

遺言書は民法に定める方式に従って作成する必要がありますが、書く内容は遺言者が自由に決めることができます。しかし、遺言書に書いた内容すべてが法的に効力を有するというわけではありません。たとえば、「きょうだい仲良くするように」と遺言書に書くことはできますが、子どもたちに仲良くする義務が生じるわけではなく、この遺言内容に法的効力はありません。

遺言書に書いた事項のうち、法律上の効力を有するものは民法などの法律によって定められた事項に限られており、その事項を遺言事項といいます。

遺言書でできること

以下に記載する事項が主に、遺言書に記載しておくと法的効力のある内容です。

これらに対して、結婚や離婚など当事者の合意が必要なことは遺言書に記載したとしても法的な強制力はありません。また、養子縁組に関しては、縁組の手続やその解消は遺言者が生存しているときでなければできないので、遺言書に記載したとしとしても効力はありません。

相続分の指定(または第三者への指定の委託)

民法に定められている相続の割合(=法定相続分)は、遺言書で指定をすることで遺言者が希望する割合に変更することができます。また、遺言書で第三者に相続分の指定を委託することもできます(民法第902条)。

遺産の分割方法の指定(または第三者への指定の委託)

どの財産を誰に相続させるかといった遺産の分割方法や配分を遺言書で指定することができます(民法第908条)。

例えば、「長男には自宅の土地と建物、長女には○○銀行の預貯金、次女には株式・債権を相続させる」というような指定ができます。

特別受益の持戻しの免除

相続人に生前贈与したことを、相続の際に考慮しないこととすることができます(民法第903条第3項)。

参考記事:特別受益とは

第三者への遺贈

遺言書で指定することで、相続人以外の相手に財産を渡すこと(=遺贈)ができます。例えば、相続人に該当しない内縁の夫や妻、生前にお世話になった友人などに遺贈することができます。

遺言執行者の指定(または第三者への指定の委託)

遺言の内容をより確実に実行するために、配偶者、成人した子、専門家(弁護士、司法書士、行政書士、税理士など)などを遺言執行者(=遺言の内容を実現させるための権限を与えられた人)に指定することができます。遺言執行人は1人でも複数でもよく、また相続人以外の第三者を指定することもできます。

参考記事:遺言執行者は何をする人?

遺留分侵害額の負担方法の指定

遺言によって遺留分を侵害された者が、他の相続人に対して金銭の支払いを請求した場合に、どの財産から支払いをするのか、その順番や割合を指定することができます。

参考記事:遺留分侵害額請求

推定相続人の廃除または廃除の取消し

推定相続人(=相続人となる予定の者)の中で、被相続人への虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行などがみられる場合は、被相続人は自らの意思で相続人の廃除を行うことができます。

通常は、家庭裁判所に請求して廃除の手続きを行いますが、遺言書で廃除の意思表示(またその取消し)をすることができます(民法第893条、第894条第2項)。

参考記事:相続人の廃除

生命保険金の受取人の変更

生命保険金の受取人を、遺言書によって変更することができます(保険法第44条、第73条)。なお、この規定は、保険法が施行された平成22年4月1日以後に締結された保険契約について適用されるものであり、施行日前に締結された保険契約については適用されないことに注意が必要です。

祭祀継承者の指定

お墓などの祭祀財産を受け継ぎ、先祖の供養を執り行っていく祭祀の主宰者を指定することができます。指定された人が引き継がなければ慣習によって決められますが、慣習がはっきりしない場合は家庭裁判所が承継する人を決めることになります(民法第897条)。

遺産分割の禁止

5年を超えない範囲で、遺産の分割を禁止することができます(民法第908条)。

すぐに遺産分割すると相続人の間で揉めごとが起きそうな場合や、家業の継続が困難になりそうな場合など、しばらくの間は分割できないようにしたいときに遺言書に記載します。

負担付遺贈

例えば、「長男に自宅の土地と建物を相続させるので、自分が死んだ後、夫の面倒を見てほしい」といった、財産を与える代わりに、何らかの条件をつけて一定の義務を負わせることができます。

寄付行為

社会貢献活動に役立てることなどを目的に、遺言によって特定の団体(個人)に財産を無償で譲り渡すことができます。ただし、寄付先によっては受取りを拒否される可能性もあるので、遺言書に記載する前に確認が必要です。

子どもの認知

婚姻していない男女間に生まれた子どもは、父となるべき者が認知することによって法律上の親子関係が生じ、父の財産を相続する権利を得ます。

この認知という手続は生前にすることができますが、遺言によってもすることができます(民法第781条第2項)。遺言による認知がされた場合、遺言者が亡くなった後、遺言執行者が市区町村へ届出を行うことになります。

未成年後見人・未成年後見監督人の指定

被相続人が亡くなることで、未成年の子どもの面倒を見る人がいなくなる場合、未成年の子どもの世話や財産管理を任せる人(=未成年後見人)と、その人を監督する人(=未成年後見監督人)を指定することができます(民法第839条第1項,第848条)。